ギャップ ページ35
「…あーーーー、えっと、私が酔いつぶれたんですよね！」
“した”その言葉がやけに耳に残って。
「覚えてたんや」
「え？あ、いや？」
覚えてるということは、昨日のことをすべて認めることになる。そのことに気が付いて慌てて言い換える。
「そこからは、覚えてなくて…」
「俺ん家来た後のことも？」
「はい…すいません」
忘れられるわけないけども。この状況を打破するには、忘れた以外他に方法がないからそうするしかない。
「ほんまに？一つくらい覚えてへんの？」
寂しそうな顔をして見つめる濱田さんから目をそらし、キッチンでお水を飲む。
「ひとっつも覚えてないです」
だって、言えるわけない。好きだと言って、私から抱きついたと。私をベッドに寝かせた濱田さんがソファーで寝ようとしたのを、わざわざ呼び止めたのも、誘ったのも私からなんて。
「…言えるわけない」
「ふふ、そうか…忘れたんならしゃーないな」
笑い声が聞こえて濱田さんを見れば、目の前にはもういなくて。代わりに後ろから声が聞こえた。
「…もう一回する？」
その言葉と同時に視界がぐるりと回って、ソファーに沈む。
「は、濱田さん？なんか、からかってませんか？」
「ははっ、ごめんごめん。一回やってみたかってん」
心臓がばくばくと音を立ててるのをお構いなしに近距離で笑うから思わず顔を背けた。
「柄にもないことしたらあかんなぁ」
そう言って起き上がってもなお、笑い続ける濱田さんは楽しそうで。意外な一面にきゅんとしてる自分もいたりする。
「心臓に悪いです」
「ごめんごめん。ふざけすぎた」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 99人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：七月雪 | 作成日時：2018年3月17日 21時
