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廉「A？」
わたしの突然の言葉に
廉くんの瞳が揺れる。
ごめんね。
わたし、
酷い女なの。
自分の都合で
あなたを振り回してるの。
廉「一旦落ち着こう？」
そう言って戸惑う廉くんの腕を引っ張る。
彼の顔がだんだん近づく。
でもその整った顔からは
戸惑いしか伝わってこないや。
廉「もう、ええの？」
あと少し、
彼の唇とわたしの唇の距離が
5センチくらいのとこで
廉くんは小声でそう言った。
ほんの少し前まで戸惑ってたのに
彼の声色は
肝が座っているような冷静な感じだった。
廉「戻るなら今やで。
素直になって
紫耀のとこに帰るチャンスは
この瞬間しかないで。」
ああ、
廉くんには気づかれてたんだ。
わたしの心の中に眠る
あの人への気持ち。
何をしてても
どこかで後ろめたさを感じて
取り繕ったような笑顔でしか
笑えてなかったこと。
だから、
わたしの笑顔を見て
いつも切なそうに笑い返してたんだね。
ごめんなさい、廉くん。
わたしは何度も何度も
あなたを傷つけてたみたい。
見て見ぬ振りをしていた恋心が
積もって
どんどん積もって
耐えきれなくなりそうで、
いつも怖かった。
廉くんだけを見たいのに、
脳裏には別の人が浮かんでくるから
自分をどんどん嫌いになって、
苦しかった。
でも実際は
その恐怖と闘うのにいっぱいいっぱいで
廉くんのこと
全然見れてなかった。
貴方のことを知りたいはずなのに
近づかれるのを恐れて
いつの間にか遠ざかって
結局何にもしないまま、
無知の仮面を被って過ごしてた。
「廉くん。」
顔と顔を
通常の距離に戻す。
いつかこの言葉を言う日が来ると思ってた。
来ないで欲しい、
そう願ってもいた。
でも
廉くんに全て見透かされていたのなら
今がいい。
今言うのが正解だと思う。
「今ここで、私を捨てていいよ。」
紫耀がさっきしたように、
廉くんも私のことを拒絶して。
「さよなら」って言葉で
最低な私を、捨ててほしい。
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作者名：Kipi
| 作成日時：2019年1月14日 4時
