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アルバはいったい何をしに来たというのだろう？
僕の名前が知りたかっただけならさっさと自分の仕事に戻ればいいのに。
「まだ何か用があるのか？そこでうろつかれると目障りだ」
「別に、用事ってほどのものはないけど。でも……クラレンス、ってどっかで聞いたような気がしてさ」
「よくある名前だろうが」
「名字でクラレンスって珍しくない？……まぁいいや」
それだけ言うと、アルバはようやく離れていった。そいつが何を考えていようと、僕には関係のない話だ。……きっと。他人が何をしようと、直接干渉してこない限りは僕にはまったく関係のないことだ。僕は僕以外の誰とも関わりたくない。
なのになぜ、今僕はこんなにもあの女のことを考えてしまっているのだろう？
分からない。
僕自身のことなのに、なぜわからない？
僕の頭の中で考えがぐちゃぐちゃになって渦巻いて、なんだか気分が悪くなってくる。こうしていると今に誰かが話しかけてくるような気がして、僕はトイレへと駆け込んだ。
幸い、手洗い場には兄弟のほかは誰もいなかった。
ばしゃばしゃと冷水で顔を洗い、ハンカチで拭いながら正面を見る。目の前にいる兄弟は顔色が悪そうだった。
「……大丈夫……じゃないよね」
「兄弟、そんなに心配しないでくれ。……職員になったからには、これからもっと多くの人間と喋らなくちゃいけないんだ」
「またさっきみたいに……僕以外と話すの？」
「仕方がないだろ」
「仕方ないことだよね」
僕はしばらく兄弟と話し込んでいた。
……やっぱり、知らない人と話すのは疲れる。兄弟以外とはおしゃべりしたくない。
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作者名：芋煮屋 | 作成日時：2020年10月18日 20時
