†第二十六話† 会えない ページ28
「・・・ッぐ、!」
掴めはしたものの数歩足りず、脇腹に触手があたって大きく傷ができる。切り傷とはほど遠く、抉られたように大きく傷になっていた。
血液がドロドロと体外へ流れ出ていく感覚が身体中を驚かす。
驚いているのは俺の体だけでなく、クラスのヤツラも驚いた表情でその場を見守っていた。
ーそれが賢明な判断だな、近づくと何が起こるか分からねぇし。
俺を傷つけたとうの本人はまだ現状が飲み込めていないのか、ぼぅっと俺を見つめてくる。イトナの瞳の奥は前と違って弱々しく揺らめいている気がする。
ーコイツは、自分でどうしたらいいのか分からないんだ。だから、俺が教えてやんねぇと・・・。
震える手でイトナの頭を軽く小突く。イトナは痛そうにこそしていなかったが驚いたように瞳を震わせた。
「・・・イトナ、お前・・バカだよな。一回や二回失敗しただけで、グレてんじゃねぇよ・・・」
寺坂「・・・ああ、俺もそう思うな。お前はバカだ、イトナ。百回失敗したっていい三月までにアイツを殺せたらソレだけで俺らの勝ちだ」
「俺が・・言いたかったセリフ、とんじゃねぇよ・・・だが寺坂の言ってることには、俺も・・賛成だ」
イトナ「耐えられない、勝利のビジョンが見えるまで。どうしたらいい」
イトナの瞳の奥はまだ小刻みに震えていて、ハッキリした答えが見つかっていないのだろう。
俺と寺坂は一瞬顔を見合わせて、すぐにイトナの方へ向き直る。
寺坂「そんな時はさっきみてぇにバカやって過ごすんだよ。その為にE組があるんだろ」
寺坂の言葉にイトナは吹っ切れたのか、触手の力が弱まる。触手に体を預けるようにしていた俺は前のめりに倒れこんでしまうが、咄嗟にイトナが俺の体を支えて、なんとか地面と接触しなくてすんだ。
「・・・イトナ、俺はお前が・・羨ましい」
イトナにだけ聞こえるよう耳に口を寄せて小さく喋る。イトナは一瞬体を震わせたが、俺の体を支えたままでいてくれる。
「お前の、両親は・・探せばまた会える。今までのことを怒る事だってできる。だけど、俺の場合は・・・俺の両親は・・」
血が抜けているせいでくらくらと思考がうまくまとまらないが、落ちそうな意識を必死に繋ぎ止めながら言葉を発する。
イトナは何も言わずに俺を支えてくれ、とても気分が落ち着いた。
「もう、・・・会えないんだ。俺の、せいで」
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一颯(プロフ) - 同性愛ものには専用のフラグを立ててください。 (2016年4月18日 3時) (レス) id: 050c8f6d1c (このIDを非表示/違反報告)
クロウサギ(プロフ) - この作品の続編見たいです!! (2015年5月18日 4時) (レス) id: 29761c99ab (このIDを非表示/違反報告)
緋腹 - この話をみてイトナ君が好きになりました!アザス!!(´∀`*) (2015年5月9日 0時) (レス) id: 5e74d9c177 (このIDを非表示/違反報告)
聖王ダークリンク - 今は………それが、お互いの為だろうからな。 (2015年4月22日 21時) (レス) id: 964e6546a5 (このIDを非表示/違反報告)
聖王ダークリンク - やはり無理か……………。いや、いいんだ。多分、最初から分かってた事だと思う……………今はまだその時じゃないってことは。あいつ自身が心を開くまでには、時間がかかると思う……………だからゆっくり待とう。 (2015年4月22日 21時) (レス) id: 964e6546a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うみしお | 作成日時:2015年4月19日 21時