〜HORIZON〜9th

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(youーside)


生い茂る、手入れのされていない草達と、聞こえてくる水の流れる音。



観光客も、地元の人もいない。



人気のない此処に連れてこられた理由がよく分からず隆弘を見ると、少し照れたようなハニカミが返ってくる。




西「俺の秘密基地なんだよね。此処」


「秘密基地？」


西「そ。悩んだ時とか壁にぶつかった時とか、よく此処にきてた」



水の音の心地よさに耳を傾けつつ、隆弘の言葉を聞く。



西「音楽をやりたい…芸能人になりたいって決めたのも、此処だった」



そう言う隆弘の横顔は穏やかで、優しい声音で。



だけど、凄く重い一言で。




ーー隆弘の夢は、此処から始まったんだ



西「ここまで正直、本当に辛い事ばっかだった」


「…」


西「何度も辞めてやるって思ったし、AAAの事が嫌になった回数だって数え切れないし」


「…」



隆弘はよく弱音を吐く。



もう限界、辛いって。



多分、ファンの子だってよく知ってる。




西「何で分かってくれないんだよって。俺の気持ちが伝わらなくてしんどかった事もある」



不器用で。


加減を知らなくて。



お父さんも心配してた通り、隆弘は本当に周りの人達と、数え切れないほどの回数ぶつかってきた。



そして、その度に苦しんできた。





だけど。




「それでも諦めないのが、西島隆弘でしょう」



弱音を吐きながら、何度も涙を流しながら。



それでも何とか顔を上げて、歯を食いしばって。



誰よりも素敵な歌声と笑顔で魅せてくれる。



それが、私の…私達の知っている‘にっしー’だ。





西「詩がいたから、だと思う」


「？」


西「昔さ、まだ詩がAAAに加入する前。俺、偶然ライブハウスで詩が歌ってるとこ見たんだ」



いつの事だろう、と考えてみるけど分からない。



あの頃は月に1度くらいのペースでライブハウスに通ってたから。




西「環境が変わって、1人でも一途に音楽に向き合ってる詩を見てたら、負けてられねえなって」


「……それは、」


西「俺だけじゃない。多分皆そう」



メンバーの心も志もバラバラで、解散寸前だったんだ。



そう言った隆弘がフワリと笑う。




西「詩が来てくれて、AAAは一つになった」





冷たい風が後ろから吹いて。



踊る髪を手で抑えて、私は目線を下に落とす。





「正解なんて無いかもしれないけど……それは違うと思う」

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