30 ページ31
(uno-side)
「宇野さんですね。綾瀬詩さんからお話はうかがっています。どうぞ」
看護師さんに話を通して、目当ての病室へ向かう。
西「なあ……俺、大丈夫かな?」
宇「何が?」
西「ほら、第一印象って大事やん?嫌われたら終わりじゃ…なあ、詩のお母さんってどんな人だろ。声楽界の天才…って事はやっぱ名門だよな。……あ、スーツで来りゃ良かっ」
宇「一旦黙ってくれる?」
ど緊張しているにっしーに嘆息する。
──他のメンバーに着いてきてもらえば良かったかな
と思うけど、にっしーならきっと無理にでも着いてきたのだろう。
宇「此処だよ。良い?来るときにも言ったけど、忘れないでね」
西「分かってる。刺激することは言わない。彼女が何を言っても否定しない」
宇「そう。私達の目的は…あくまで連れていくことだから…………今日の詩のライブに」
事の始まりは、詩の家にメンバー全員で泊まったあの日。
『私……お願いしたいことがあるの』
詩の願いは、私に1度伝えられた後、改めてメンバーにも伝えられた。
『当日私は動けないから……私の代わりに、お母さんをライブに連れてきてほしいの』
詩の母親である千弦さんは実の娘である詩の事を、覚えてはいるものの認識ができない。
詩を目の前にしても、お兄さんである奏さんだと思い込んでしまうんだ。
だから、今回のライブに連れていくことで、どんな結果が生まれるかは分からない。
だけど詩は言った。
『今の私の歌を聞いてほしいの』
すべて分かった上で、家族と向き合いたいと。
私達には勿論反対なんて出来なくて。
寧ろ、出来ることがあるならやってあげたい。
私達メンバーには当たり前に家族がいて、実家が地方の人もいるし、頻繁に会える訳じゃないけど。
辛いことがあったら励ましてくれて、嬉しいことがあったら一緒に喜んでくれて。
間違ってるときには正してくれて、迷ってるときには背中を押してくれる家族がいた。
だから、詩の晴れ舞台を。
詩の家族にも見てほしい。
お互いもう立派な大人で、こんなの唯のお節介なのかもしれないけれど。
でも、人にはやっぱり頼れる誰かは必要だと思うから。
詩がSOSを出してくれたのなら、手を差し伸べないわけにいかない。
244人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
海(プロフ) - くみさん» ありがとうございます!楽しんで頂けて、とても嬉しいです♪しかもかなり長かった筈なのに一気読みして頂いたとは…!本当にありがとうございます!マイペース更新ですが、これからも精一杯頑張りたいと思いますので、よろしくお願い致しますm(__)m (2019年6月22日 8時) (レス) id: 00727ba42b (このIDを非表示/違反報告)
くみ(プロフ) - ものすごく楽しいです!!昨日から一気に読んでしまいました!これからも楽しみにしてますね! (2019年6月21日 12時) (レス) id: 9ac3551b76 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:海 | 作成日時:2019年3月24日 19時