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「すれ違いの優しさ」 ページ15

Aが2階に上がるのを見送って、キンタロスはしばらく動けずにいた


彼女が薄々良太郎の変化に気づいていることはわかっていた
彼女がそれを悩んでいることもわかっていた
けれど、


ううむ、とキンタロスは低く唸った


彼女のための嘘は、いつの間にか彼女の心に穴を開けていた
良太郎とAは長い付き合いだから、余計に不安になったのだろう


良太郎のことを疑う自分と信じたい自分で葛藤して、さらに穴を広げるだろう


だからと言って安易に巻き込む訳にはいかない


「(なにせカイに狙われとるんやからな)」


そこまで考えてまた頭を捻る


例え巻き込んだとしたら、彼女は自分達の姿を見て恐るだろう


ここまでの努力が水の泡になるのは嫌だ


何より彼女は自分達イマジンを良太郎の別人格と信じて疑わない


「(一体どうしたらええんや)」


唸りながら考えていると、バルコニーの扉がガラリと開かれた


「キンタロス、何してるの?」


「良太郎、」


心配そうな顔をして入ってきたのは良太郎だった
どうやらジェンガ大会はとりあえず終わったらしい


キンタロスは口を開いたが、躊躇して閉じた
悩むキンタロスに良太郎は心配してまた声を掛けた


「何かあったなら、話聞くよ」


そう言われてもキンタロスは口を開こうとしなかったけれど、やがて意を決したように話し出した


キンタロスが話している間、良太郎はじっと黙って聞いていた


「俺は良太郎に救われた命や。だから良太郎が何しようとも何も言わん」


けどな、と良太郎の反応を伺って続けた


「このままやったらあかん。Aが傷つくだけや」


そう言うと良太郎はハッと顔を上げて、バツの悪そうな顔をして俯いた


「いつか話さなかあかん。俺たちが、電王だってあることをな」


「そう…だよね」


良太郎は自分の腕の傷を見ながらぽつりと呟いた
キンタロスは良太郎の肩をぽんと叩くとどっこいせ、と立ち上がった


「さ、そろそろ中に入るで。泥棒を捕まえることが目的やからな」


良太郎を立ち上がらせて背中を押すと、苦笑いしながら振り向いて言った


「でもね、Aはキンタロス達のこと怖がらないと思うな」


「…確かにな」


いつかのイマジンに立ち向かった彼女を思い出してそう思った


中に戻ろうとすると、屋根の方に黒い影が動いた気がして、そちらに目を向けた


が、何も無かったので良太郎と中に入っていった

「俺、誕生!」 1話→←「ダイヤを乱す牙」 3話



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フォンフォン(プロフ) - 萌笑さん» そう言ってくださると嬉しいです!ありがとうございます! (2018年9月17日 16時) (レス) id: 0273cd81dc (このIDを非表示/違反報告)
萌笑(プロフ) - この小説めちゃくちゃ大好きです!これからも頑張って下さい! (2018年9月17日 10時) (レス) id: b383e375e0 (このIDを非表示/違反報告)
鮭のマリネ(プロフ) - 廉火@こたぬき志麻リスさん» 貴重な感想をありがとうございます!夢主をいかに割り込ませるかで結構悩んで無理矢理な感じになりましたが、気に入って頂けて安心しました。電王、いいですよね。電王の魅力を無くさないように書いていきますので、これからもこの小説をよろしくお願いします! (2018年9月7日 10時) (レス) id: 0273cd81dc (このIDを非表示/違反報告)
廉火@こたぬき志麻リス(プロフ) - 初コメ失礼します! 最近、電王を見直し始めまして再熱しておりますところ、この物語を見つけました。やっぱり、電王はいいですね(唐突) 文章等も惹き込まれる文章で、何より、夢主ちゃんの存在がいい(真顔) これからも楽しみにしております! (2018年9月6日 23時) (レス) id: 7e3ffaecdb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:フォンフォン | 作成日時:2018年9月1日 11時

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