フクロウの憂鬱 ページ35
「はあ…」
妖魔界の閻魔宮殿の一角。
書類という書類に埋もれたフクロウはそっとため息をついた。
酒呑童子の元から離れ閻魔宮殿に仕えたものの、こうした事務作業をこなす日々が続いていた。
しかも最近は空亡への対策についての会議が頻繁に行われたり、結界の修行だったり業務に追われる日々にフクロウは心が折れそうだった。
「失礼する。進捗はどうだ」
「…カイラ様、こちらの方は大方片付きました」
「ご苦労」
部屋に入ってきたカイラの腕にある更なる書類の山にフクロウはそっと遠い目をした。
終わった書類をカイラに提出すると、ざっと目を流したカイラが感嘆の息を漏らした。
「問題ないな。しかしここまで手際が良いとは」
「はは、私は前線よりもこういった事務作業の方が得意でして…」
フクロウは元々戦闘よりもこういう書類作業、または破壊工作などの方が得意とし、カイラの元では酒呑童子のように前線に駆り出されることはなかったので元々の実力が発揮されていた。発揮されすぎて若干社畜化しているが。
ふとフクロウの脳裏に彼女の姿が過り執筆していた手が止まった。
「天野Aが気になるか」
「！」
カイラに思考を言い当てられて驚いて顔を上げると「顔に書いてある」と言われ、思わず片手で顔を覆った。
「少し前に酒呑童子と対峙したそうだ」
「酒呑童子様と！？ご無事なんですか！？」
カイラの言葉にガタッと席を立つとカイラが落ち着かせるように片手を上げた。
はっとしてまた椅子に腰かけるとカイラは若干呆れの表情で続けた。
「が、今は奴らを味方に付けたようだ。なんせ奴らの探していた姫は姉の天野ナツメだったからな」
「あの娘が…！？」
そんな近くにいたのに気づけなかったとは、と再び己の微力さを思い出し凹んだ。
だがAも無事息災であるという言葉にこっそり安堵した。
するとその様子を見ていたカイラが不意に口角を上げた。
「その書類全てを終わらせたら人間界に行く許可を出してやらなくもないぞ」
「…！真でございますか！」
思わず喜色満面に返してしまいはっと取り繕うがカイラは見透かしたように片眉を上げた。
が、突然目の前に置かれた書類の山がフクロウを再び絶望の縁へと叩き落とした。
「全部終わらせたら、だがな」
「まだあるぞ！」
「てをうごかせ！」
追加の書類を持ってきたフウとライに持っていた筆を折りそうになったが、これも人間界へ行くためと覚悟を決め書類に向き合った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 54人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
優(東方ガチ勢) - 凄く面白いです！ケースケの立ち位置に夢主を入れるのは考えたことがなかったです(笑)とても面白いしいい話なので、続きが出来たら更新して欲しいです！ (2022年8月3日 15時) (
レス) @page37 id: 14abcb2f13 (このIDを非表示/違反報告)
名無 - とても面白かったです。続きがあれば何時までも楽しみにしています。 (2021年3月23日 9時) (レス) id: cdf16b300a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：フォンフォン | 作成日時：2020年10月12日 22時
