段ボール肆 ページ5
｢で、お前は一体誰なんだ？｣
段ボールから出てきた少女を椅子に座らせて向かいに座る。聞きたいことが山ほどある。
｢名前はAです。それ以外は分かりません。｣
｢分からない？｣
家族は居るのかと聞こうとした所で呑み込んだ。こういうことは聞いていい事とダメな事がある。
｢どうすっかねぇ…｣
頭を掻いてこの少女の顔を見る。じっとテーブルだけを見つめる彼女の目にはその歳では抱えるはずのない深淵が写っていた。
白いTシャツから剥き出しの細い腕には外傷は無く、顔にも傷は無かった。…それにしてもこの子、どこかで見た事があるかもしれない。
｢…唯一覚えてる事は、あらゆる孤児院にタライ回しにされてた事だけです。｣
｢孤児院？｣
こくり、と頷く少女はそれ以上喋ろうとはしなかった。重苦しい空気が部屋中を満たしている。
｢……甘い物好きか？｣
沈黙を破るように口を開くと少女は体をピクッと反応させて｢…はい｣と呟いた。
そもそも何故段ボールに入っていたのか、あの配達員は？オレの所に送られてきた理由は何なのか。頭には疑問符しか浮かばないが多分彼女にそれを聞いたって彼女にすら分からないのだろう。
ココアパウダーを入れたカップにお湯を入れながら椅子に大人しく座る少女をチラッと見る。
やっぱり何処かで見た事があるんだよな…。
｢……あの子、｣
隣でロトムが急に声を上げた。何だろうと横を見るとロトムの画面には7ヶ月前に起きた凄惨な事件の新聞のページが映し出されていた。
『犯人は母親！？驚くべき一家心中事件の真実』と書かれた見出しの横にはAの顔がでかでかと載せられている。
思い出した。
偶然テレビを付けていた時に母親が一家心中を図ったというニュースが流れていのだ。父親は亡くなったが一人娘はお腹を刺されて意識不明の重体になったと聞いていた。その時に何故か顔写真が映されて後にテレビ局が叩かれていた気がする。
｢嘘だろ…。｣
｢かなりの精神的ショックで記憶喪失になったって聞いたロト、ジムチャレンジ中の悲惨な事件だったから余計被害者について掘り出されていたロト…。｣
Aが覚えていたことは孤児院をタライ回しにされていた事だけだと言っていた。辻褄は合う。
母親に殺されて記憶喪失になって知らない大人の事情で色んなところに振り回されて…考えるだけで頭にふつふつと血が上る。
あの闇を見るような目はそういう理由があったのか。
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鶴丸 - 早く更新してくださぁぁぁい!!!早く続きが見たいです！ (2021年10月31日 6時) (
レス) @page19 id: c05427c036 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - 夢主ちゃん…ポケモン持ってないと一人は危ないぞ…(そこなんだ…) (2020年6月28日 13時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うみ | 作成日時：2020年4月4日 2時
