やさしく留める釦

乱れ心に棘 ページ31

お昼休み。いつもの食堂でご飯を食べながら私は友達に矢花くんとの遊園地のデート事情を報告していた。



｢良かったじゃん聞く限り良い人そうだし！そのまま付き合うまでいけばいいのにねえ｣

｢いや矢花くん私の事友達としか見てないよ｣

｢2人きりで遊園地だよ？脈アリは大いにある｣



男女の友情あると思ってる？と問いかけられ何とも言えない気持ちになった。因みに大光はノーカンだと言われた。



｢Aがうーんってなってる理由って何？バンドマンだから将来見えにくいとか？｣

｢違うよ！バンドマンなのは全然良い。そうじゃなくて･･････矢花くんを知る度に自分が矢花くんに対して傲慢になっていくのが分かるの。それでゴチャゴチャ考えちゃって最近何も手につかなくなる･･････｣



どう言えば伝わるのか分からない。頑張って説明しようとするあまり、感情的になりすぎて涙がこぼれそうになるのを必死に留めた。


告白しないまま友達としている事が彼にとって負担にならないのか、自分の想いを伝えるのが正解なのか。告白する事で今の関係性が崩れてしまうのだけは嫌だ、それならずっと友達のままで居たい。



最初はそう思っていた。



でも段々矢花くんを好きになるにつれて、友達の枠から特別になりたいと感じるようになった。不特定多数に向けられる感情の中の一人になりたくない。矢花くんの特別になりたい。彼の｢1番｣が私であったらどんなに幸せなんだろう。執着していたいし、されていたい。どんなに貧しくて辛くて人生終わらせたくても矢花くんが私に笑って｢好きだよ｣って抱き締めてくれたら今日も生きられる。


もしフラれたら私の｢1番｣の夢は終わる。｢好き｣か｢何とも思ってない｣どちらかでしかないのに、もし半分を引き当ててしまったら？考えただけでどうにかなりそう。


夜中はこんな風にむしゃくしゃした思いに苛まれて眠れない。朝起きたら、付き合ってもないのにこんなふうに重く考えてバカみたいって自分を蔑んで自己否定。



｢メンヘラみたいで嫌すぎるんだけど･･････｣

｢結構重症じゃん｣



私の思いの丈を聞いた友達は、くつくつ笑った。ホントに笑える。恋してる子達ってみんなこんな気持ちになってるのかな。矢花くんの事を考えると酩酊状態になる。どうにも解決策が見いだせなくて机に突っ伏していると、友達がおもむろに口を開いた。

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