よろこびに咲く花

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茶封筒事件から約１ヶ月。
あの日を境に世界は目まぐるしく動き出した。


CDデビューが決まったとはいえ、ジュニアとしての自分たちの役割は変わらずにあって、嵐のように日々は過ぎていく。



そんな中、事務所から呼び出しを受けた。

メンバー全員が呼び出されているんだと思っていたら違っていたみたいで、いつもは来ることのない階の入ったことのない会議室に連れていかれた。中に入ると大きな机といくつもの椅子が並んでいる。

なんでこんな所に？ と不審に思っている俺に構うことなく、案内をしてくれた事務所の人は少し待っていなさいとだけ言い残してさっさと部屋を出ていった。


ぽつん、とだだっ広い会議室に取り残され、仕方なく出入口に近い椅子に座った。


その場所から大きな窓が目に入った。窓の向こう側は灰色の空がビルの隙間を縫いつつ広がっていて、ガラスにつく滴の多さが雨足の強さを物語っている。

それでも、雨の匂いに紛れて暖かさを感じる雨だった。


春がすぐそこまできているんだ、と思った。





ガチャ、

物思いにふけていると、静かにドアが開く音がした。
振り返ると、新しく俺たちの担当になったマネージャーが入ってくる。俺が立ち上がるのを見ると、お疲れ、と言いながら俺の対面に座った。



「…お疲れ様です」

「急に呼び出して悪かったね。座って」

「いえ…」

「ドラマの撮影は予定通りに進んでる？」

「はい、来週がオールアップの予定になっています。……あの、今日呼ばれてるのって俺だけですか？」


「あとで北山も来るわ」



北山？ 俺らふたりだけ？ って、あとでって…


状況がわからず言われたことを反芻していると、とりあえず座りなさいと促された。



穏やかだけど、有無を言わせない雰囲気。

入所して結構経つけど、目の前にいる この人を見たことは数えるほどしかない。でもこの人のことはよく話に聞いていた。ジュニア同士のくだらない噂話程度だけど。

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