よろこびに咲く花

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みつの頬を両手で包む。
ゆっくりと近づけば、静かにまぶたを閉じる。
ちゅっとキスを落とせば、タオルを掴んでいたみつの手が俺の後頭部にまわされた。

だんだん深くなる口づけに、甘く吐息を漏らすのはいつもみつだ。


「…はぁ、た…ま、…っちゃ…」

「なに？」


「…する？」

「……さっきしたばっかじゃん。明日も仕事だよ」

「…たまちゃん、若いのに枯れ…いてっ！」


「ふざけてると放り出すよ？」

「かわいい冗談じゃん！」

「悪趣味」



どこがかわいい冗談だ。
みつがああやって誘ってくる時はガヤと何かあった時だ。
そうゆう時の みつはガヤとのこと忘れたくて、ひどく抱かれたがる。


俺だって男だ。
ぐずぐずに甘やかしたい。とろけるぐらい気持ちよくさせたいし、気持ちよくなりたい。
そういうセッ クスなら大歓迎だけど。



ぶーぶー言いながら、のそりと起き出したみつをほっといて、髪を乾かしに洗面所へ向かう。


ドライヤーで髪を乾かしていると、鏡にみつがひょこっと覗いているのが映る。
パチンとドライヤーのスイッチを切ると、わざとらしく頭を引っ込めた。

何がしたい、おじさん。


「なに？」

「…怒った？」


恐る恐る顔を覗かせるみつ。
意味がわからなくて首をかしげると、小さい声で悪趣味、と聞こえた。


あぁ、さっきのことを気にしてるのか。
俺が怒っているのは俺自身とガヤに対してなんだけど、みつからしてみれば自分が怒らせてしまったと思うか。


「怒ってないよ」

「ほんと？」

「嘘ついてどうすんの」


嘘つくなら本当に必要な時につくし、そう続けた。
たまちゃん堂々と嘘つきそう、度胸あるもんな。そう言ってみつは笑った。

これは褒められているんだろうか？
微妙な言い方をするみつに眉を寄せれば、褒めてるよ、と微笑まれた。


「みつこそ風邪引くよ」


みつは俺のスウェットを着てるから、まるでサイズが合ってない。
首周りが大きくて、それを渡した自分に舌打ちする。


リビングに戻って、今日着ていたざっくりしたニットカーディガンを拾い上げるとみつに羽織らせた。
平気なのに、と言いつつも素直に袖を通すみつ。



みつも目が覚めちゃったみたいだ。
風呂上がりの水分補給に何か飲むかな…


「みつ、何か飲む？」


とりあえずお湯を沸かそうとコンロにケトルをかける。
返事のないみつを振り返ると、立ったままカーディガンの袖で口元を覆っている。


なにしてんだろ？

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