よろこびに咲く花

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みつの行動に引っかかるものを感じたけど、これ以上はマネージャーに訊いても困らせるだけだろう。
多分、本人の顔を見てきた方が早い。


「んー、ちょっと顔出してみる」

「仕事終わりにすみません…。玉森さんと話せば北山さんの気分転換になるかもですし、よろしくお願いします」

「そんなに気にしなくてもいーよ。てか、みつの面倒みてくれてありがとね」

「いえ… あ、北山さん寝てると思います。予定が１時間遅れて、今空き時間なんです」

「おっけー！ じゃあ、お疲れちゃ〜ん」


お辞儀するマネージャーに手を振りながら、みつの楽屋へ向かう。
あのおじさんは空き時間じゃなくても寝てそうだ、と口元が自然に緩んだ。






あの時は顔を出してすぐに帰るつもりだった。


でも、みつは泣いてた。
ボロボロと大粒の涙を落として。



最初、みつは俺を見ているのに俺とは認識していないように泣いていた。
なのに急に焦点があったように俺の手を掴んだ。



それで俺に言ったんだ。



――― 俺に、興味ない？




みつに興味？

何それ、って思った。


そんなの、あるに決まってるじゃん。

じゃなきゃ、こんなに寝起きの悪いヤツ、毎回起こすわけないじゃん。
じゃなきゃ、仕事終わりに心配で顔出すわけないじゃん。



興味ないのは、みつじゃん。
ガヤ以外、興味ないでしょ？


俺の手を掴んだ みつの手が震えてて、悲しくなった。


鈍感なみつに
勝手なガヤに
馬鹿な俺に


その手を振り払うことだって出来た。

あまりにも不毛で先がわかり過ぎてる。
愛情は与えるものかもしれないけど、そんなの綺麗事だ。
与えたら見返りが欲しい。
手を取ったら、自分だけのものにしたい。

そんな願いが叶うことはないとわかっていた。



でも、みつをほっとけなかった。
ひとりにできなかった。

…違う。
ひとりにしたくなかった。




だから俺はずるい返事をしたんだ。



――― 俺の知らない みつを教えて？



それからみつは時々うちにくる。

ガヤとの関係は変わらず続いてるみたいだ。

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