よろこびに咲く花

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*


「みつ？ 寝たの？」


風呂から上がって寝室を覗くと、明かりを点けっぱなしでベッドの上に丸まってる物体がひとつ。


…寝るならきちんと寝ればいいのに。

多分、俺のことを待っていたんだろうけど、毎回挑戦して毎回失敗している。
寝汚い このおじさんには至難の技らしい。


髪の毛をタオルで拭きながら、ベッドに近づく。
真ん中で寝ればいいのに、ご丁寧に俺が寝れるスペースを空けてるから、寝返りをうったら落っこちそうだ。

見ているこっちがヒヤヒヤするよ。
俺の家に泊まりに来て、ケガとかシャレになんないから。


ため息をつき、丸まってる みつの肩に手を置くと、軽く揺すった。


「みーつ、落ちそうだから真ん中で寝なよ」

「…んぅ、」


寝起きが悪い みつは、ちょっとやそっとの起こし方じゃ起きない。
楽屋でニカたちがいくら揺すっても起きやしない。
そして無理やり起こされた みつは、いつも決まって不機嫌だ。


でも昔から俺が揺すると、すんなり起きる。
なんでだかわからないけど。


俺に起こされた みつは、しばらく置き物みたいにぼんやりしてる。
どこここ？ って顔で周りを見渡して、俺を認めるとヘラっと笑う。



…おはよぉ、たまちゃん？


寝起きの声で言う みつは、とてもじゃないが年上には見えない。


そんなことを繰り返していれば、自然と楽屋でみつを起こす係は俺がすることになる。
個人の仕事で俺がいない時はニカが起こすらしく、大抵次に会った時にグチられる。


「なんで玉森の時はすぐ起きるんだよ！」
あのおじさん、めんどくさいっ！！ とグチグチ言いながらも楽しそうなニカ。


お前も毎回毎回飽きずに みつが嫌がる起こし方をして、叩かれ、グチる。
鉄板のコントか？ と呆れながら、俺も毎回同じ台詞を言うんだ。


「そんなん知るか」


ぶーたれていたニカが吹き出し、ふたりで顔を見合わせて笑う。


それを見て宮田とがっちゃんがケタケタと笑う。
わったーとガヤは少し離れた場所にいながらも俺たちの会話に耳を傾けていて、微笑んでいる。


件の人物は、今日もやっぱりソファーでのん気に寝ているんだ。





そんな、日々だった。


…そんな日々がずっと続くんだと、疑いもしなかった。

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