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みつの声がひどく寂しそうに聞こえて、肩に手を置いて振り向かせた。
でも振り返ったみつは不思議そうにオレを見上げてくる。
「なに?」
「あ… いや…」
答えに窮していると、変なニカって笑われた。
本当は訊きたいことはたくさんある。
つながりって何?
もらったって誰に?
なんで笑ってんのに寂しそうなの?
どれひとつとして訊けなくて、小さく笑い続けるみつを見ていると、まだ積む前であろうガラスをみつがつまみ上げ、手のひらに乗っけた。
それを見ていたら、最初に訊いてはぐらかされた質問を無意識にもう一度口にしていた。
「それってなに?」
みつはオレと持ち上げたガラスとを見比べる。
そのまま手のひらの上で転がるガラスに視線を落とすと、黙り込んでしまった。
やっぱり答えてもらえないのかと諦めかけた時、みつの声が聞こえた。
「…俺なのかも」
ガラスを指先に挟み、かざすように持ち上げた。
光を受け、キラキラと輝くそれを、みつは悲しそうに愛おしそうに見つめる。
「これは名前のない俺なのかも」
その表情に、ぎゅうっと胸を鷲掴みされたように苦しくなる。
深追いできないみつの雰囲気に、ふーん、と興味なさそうな声しか出せなかった。
あの後もみつの家を訪れると、大きさは違っていたけどガラスの山はいつだってそこにあった。
最近は何度か夜中にぼんやりとガラスのかたまりを見つめる みつを見かけた。
そんなみつを見るたびに、名前のないみつはふたりいるのかな?とよくわからないことを考えていた。
すっかりぬるくなってしまったチューハイをテーブルの上に置いて立ち上がる。
千賀の横を通りチェストに近づくと、ガラスはバラバラと散らばったまま、静かにそこにあった。
あの時のみつの言葉がどういう意味なのかはわからない。
でも、
みつに怒鳴るガヤの声
声を荒らげる玉森
悲しいぐらい明るいみつの声
熱を持った身体
わずかに腫れたまぶた
充血を残す瞳
みつを見る玉森
玉森を見るみつ
それに…
みつと玉森を見ていたガヤ、
今日見たものが散らばるガラスと重なっていく。
みつの言葉の意味はわからない。
夜中にぼんやりと起きてたみつ。
見つめる先にあったガラスの山は もうない。
解けそうで解けないクイズにモヤモヤしてるみたいだ。
答えはまだ出ない。
だったら せめて、
今夜だけでいいから。
みつの見る夢が楽しいものでありますように。
願わくは、祈らせて。
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Kmizusawa5110(プロフ) - お返事ありがとうございます。楽しく読ませて頂きます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 3f6429dfa1 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - Kmizusawa5110さん» Kmizusawa5110さん、コメありがとうございます。私自身、明るい読後感が好きなのでそれぞれが納得出来るように持っていきたいと思っています。パスは外しましたので、お好きな時にお読みください(^ ^) (2017年4月19日 18時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
Kmizusawa5110(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。みっくんと玉森くんと藤ヶ谷くんが良い結果になればいいなと思います。パスワード、教えて下さい。続き楽しみにしてます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 9aec22d661 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - yuriさん» yuriさん、いつもコメありがとうございます。メンバーサイドがある程度まで来たので次はやっと…という感じです。もう少し続きますが、また覗きに来てください(^ ^) (2017年4月18日 21時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
yuri(プロフ) - umenoさん、続けて更新嬉しいです。みんなの優しい気持ちでみっくんが楽になれますように。 (2017年4月18日 20時) (レス) id: c775aeb07a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:umeno | 作成日時:2016年9月25日 4時