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「宏光とたま…」
物思いに耽けていると、千賀がぽつりとこぼした。
「ん?」
「変わったね」
「…そうだな」
千賀も同じように感じていた事を知ると、他のメンバーも似たような事は感じてるだろうなと思った。
さっきみつはピンときてなさそうだったけど。
玉森は…、自覚してんのかな。
「オレは宏光が気を緩めれるなら、それが一番だと思うけど…ニカは?」
千賀の問いには答えず、リビングの壁際、腰ほどの高さのチェストに目線を送る。
そんなオレに気づいた千賀がその視線を辿った。
前にみつの家に来たのは2週間くらい前だった。
その時はいつもと同じようにガラスの山がふたつあった。
でも今日、迎え入れられ何気なしに見たら、ガラスの山はそこにはなかった。
崩された後のように散らばるガラスは、輝きを失い、部屋の明かりをただ受けるだけになっていた。
みつを見れば千賀と笑いながら買い出したものをキッチンに運んでいる。
その姿はいつもと変わった様子はなくて、崩されたガラスとは繋がらない。
――― これは名前のない俺なのかも。
ガラスをつまんで悲しそうに愛おしそうにつぶやいた みつ。
あれは まだ寒い季節だった。
グループ仕事の次の日が ふたりとも休みで、みつの家で宅飲みしつつ尽きない話をしていた深夜過ぎ。眠くなってウトウトしていたら、カランッと高く響いた硬質な音。
いつもなら気づかないだろう小さな音に気づいたのは、夜が深くなってたからかな。
「…みつ?」
「悪りぃ、起こした?」
目をこすりながら みつの背中に聞くと、ぴくりと一瞬間があって、ゆっくりと振り返った。
「…起きてるし」
「寝てただろ」
なんの意地っ張りだよ、そう笑うみつに近付いて肩越しから覗き込む。
ガラスの山がふたつ。
左は数個の山で右は幾重にも重なっている。
「なにこれ?」
アルコールと眠気でぼんやりした頭で訊くと、ふふっと笑われた。
「んー、なんだろなぁ?」
質問に質問で返される。
はっきりしないみつはめずらしい。
「積むの?」
「今日は終わり」
否定はされず、今日の分がさっきの音だったんだと理解する。
「明日も積むの?」
「明日は積まない」
「ふーん?いつ積むの?」
「うーん、わかんない」
「今日はなんで積んだの?」
ポンポン答えていた みつが止まる。
「…もらえたから」
何を?ってオレが訊く前に みつは笑った。
そしてつぶやいたんだ、小さい声で。
つながり、と。
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Kmizusawa5110(プロフ) - お返事ありがとうございます。楽しく読ませて頂きます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 3f6429dfa1 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - Kmizusawa5110さん» Kmizusawa5110さん、コメありがとうございます。私自身、明るい読後感が好きなのでそれぞれが納得出来るように持っていきたいと思っています。パスは外しましたので、お好きな時にお読みください(^ ^) (2017年4月19日 18時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
Kmizusawa5110(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。みっくんと玉森くんと藤ヶ谷くんが良い結果になればいいなと思います。パスワード、教えて下さい。続き楽しみにしてます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 9aec22d661 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - yuriさん» yuriさん、いつもコメありがとうございます。メンバーサイドがある程度まで来たので次はやっと…という感じです。もう少し続きますが、また覗きに来てください(^ ^) (2017年4月18日 21時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
yuri(プロフ) - umenoさん、続けて更新嬉しいです。みんなの優しい気持ちでみっくんが楽になれますように。 (2017年4月18日 20時) (レス) id: c775aeb07a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:umeno | 作成日時:2016年9月25日 4時