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どうしてこんなことになっているのかわからず、でも中に入ることも出来ないでいると、また玉森の声が聞こえる。玉森が本気で怒鳴ってる声なんて、今まで聞いたことあったっけ?
たまはよくオレに絡んでくるけど、それだって こんなに声を荒らげたりしない。
宮田をいじり倒してる時だって、こんな本当に怒りしかない声なんか出さない。
みつとガヤにはさまれて、玉森ののほほんとしたキャラクターは、いつだって悪くなりそうな雰囲気を和らげていたのに。
『うるさいッ!』
『おかしいでしょ!? ガヤがみつに物投げたり怒鳴っていい理由なんて、どこにもないじゃん!』
『たーま、いいんだって。俺が無神経に口出ししちゃったんだから』
みつの声がうっすらと聞こえた。
こんな張り詰めた空気の中、いつものみつの声。
ううん、多分いつもより明るい声。
なのになんでだろ、すごい悲しい気持ちになる。
ざわざわと胸が痛い。
…みつ、どんな気持ちでそんな声出してるんだよ。
どうしてガヤが怒ってるかなんか知らない。
どっちが悪いとかそんなのも知らない。
ただ あんな声を出すみつのそばに行きたくて、行ってあげたくて、握ったままだったドアノブを回そうとした。
そのオレの手に千賀の手が重なって、ぎゅっと力を込められる。
千賀を見ると、泣き出しそうな顔でふるふると小さく首を振られた。
「…ニカ、もどろ。オレたちここにいない方がいい…」
「でも、みつが…」
「…オレたちが知らない方が宏光のためになることだってあるよ」
それにガヤさんだって…、そう小さく言うと千賀がオレの腕を引っ張った。
その手が震えている。
なんだよ、おまえだってみつのそばに行きたいくせに。
みつだけじゃない、ガヤのことだって心配だよ。
優しいガヤがあんな風に怒鳴って、後悔しないわけないもん。
きっと玉森だって…
それが痛いほどわかってるから、みつがあんな明るい声を出すんだってことくらい、オレにだってわかるよ。
きっと、オレたちには知られたくない場面だってことも…。
「…わかった。戻ろう」
ドアを睨んだまま そう言うと、千賀がグスっと鼻をすすって、うん…とうなづいた。
オレの手に重なっている千賀の手を取り握りしめる。
ドアノブを離すと、千賀と手を繋いだまま歩き出す。
千賀は何もしゃべらない。
オレも押し黙ったまま、どうすればみつの力になれるのか、それだけを考えて歩いた。
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Kmizusawa5110(プロフ) - お返事ありがとうございます。楽しく読ませて頂きます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 3f6429dfa1 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - Kmizusawa5110さん» Kmizusawa5110さん、コメありがとうございます。私自身、明るい読後感が好きなのでそれぞれが納得出来るように持っていきたいと思っています。パスは外しましたので、お好きな時にお読みください(^ ^) (2017年4月19日 18時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
Kmizusawa5110(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。みっくんと玉森くんと藤ヶ谷くんが良い結果になればいいなと思います。パスワード、教えて下さい。続き楽しみにしてます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 9aec22d661 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - yuriさん» yuriさん、いつもコメありがとうございます。メンバーサイドがある程度まで来たので次はやっと…という感じです。もう少し続きますが、また覗きに来てください(^ ^) (2017年4月18日 21時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
yuri(プロフ) - umenoさん、続けて更新嬉しいです。みんなの優しい気持ちでみっくんが楽になれますように。 (2017年4月18日 20時) (レス) id: c775aeb07a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:umeno | 作成日時:2016年9月25日 4時