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ガコン、
白色の妙に明るい小さい空間に金属の鈍い音が響いた。
勢いよく落ちてきた缶を無心で拾い上げ、手の中で転がしながら、昼間みつと座ったベンチに座る。
ほんの何時間か前のことなのに、随分前のことみたいだ。
身体中の水分を、全部涙に変えたように泣きじゃくっていた みつ。
あの時はものすごく悲しそうだったけど、それでも、ガヤのことが好きだと打ち明けてくれた。
たいせつな宝物を見せるように、そぉっと。
その表情はすごく綺麗で…、一瞬見惚れてしまった。
―――― 俺、藤ヶ谷のこと好きでいるの、やめる。
―――― 俺の想いは、いいものじゃないと思う。
「…あんなこと言わせるために味方になるって言ったんじゃないのになー」
ため息と共に転げ落ちる、俺の戸惑い。
コロコロと無機質な床を転がっていく。
しかも俺自身が困らせるわ甘えるわ…
何やってるんだ、本当に。
「……あぁー、もうっ!!」
「お悩みですかな? 青少年くん」
自分の行動を思い返し、いたたまれず髪の毛をぐしゃぐしゃっと掻きむしっていると、入口の方から聞き慣れた声がした。
なんでお前がいるんだ、と思いながら声のした方を向くと、頭だけをひょっこり覗かせて宮田がいる。
「呼ばれてなくても ジャジャジャジャ〜ン♪」
「…うっせー、勝手に覗いてんじゃねーよ」
「それだけ悪態つけるんなら 大丈夫そうだね」
俺の不機嫌な態度なんて お構いなしに休憩所に入ってくると、俺の手元を見て、コーヒーなんてめずらしいねー、とのん気に言ってきた。
そのまま自販機の前まで行くと、また鈍い金属音がガコン、と響いてくる。
宮田は俺の隣に座ると、「はい交換」といつも俺が飲んでる乳製品と入れ換えた。
「…おせっかいめ」
「イライラしてるならカルシウムが必要でしょう」
チッと舌打ちをする。
長年の付き合いって、こういう時は面倒だ。
ガラ悪いなぁて苦笑しながら、俺から奪い取った缶コーヒーのラベルをまじまじと眺めている。
「しかもなんでまた無糖」
「…そういう気分なんだよ」
苦い苦いコーヒーで自己嫌悪に輪をかけたかっただけだ。
困らせたり甘えたりなんて、可愛い方だ。
味方でいるなんて言っておいて、追いつめてしまった。
泣きそうに顔を歪めた みつ。
俺の前ではいくらでも泣いて構わないのに。
…また我慢させてしまった。
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Kmizusawa5110(プロフ) - お返事ありがとうございます。楽しく読ませて頂きます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 3f6429dfa1 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - Kmizusawa5110さん» Kmizusawa5110さん、コメありがとうございます。私自身、明るい読後感が好きなのでそれぞれが納得出来るように持っていきたいと思っています。パスは外しましたので、お好きな時にお読みください(^ ^) (2017年4月19日 18時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
Kmizusawa5110(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。みっくんと玉森くんと藤ヶ谷くんが良い結果になればいいなと思います。パスワード、教えて下さい。続き楽しみにしてます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 9aec22d661 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - yuriさん» yuriさん、いつもコメありがとうございます。メンバーサイドがある程度まで来たので次はやっと…という感じです。もう少し続きますが、また覗きに来てください(^ ^) (2017年4月18日 21時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
yuri(プロフ) - umenoさん、続けて更新嬉しいです。みんなの優しい気持ちでみっくんが楽になれますように。 (2017年4月18日 20時) (レス) id: c775aeb07a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:umeno | 作成日時:2016年9月25日 4時