30 ページ31
「…あんまり無理しないでちゃんと休みなよ?」
たまの心配する気持ちが嫌味なく俺に伝わってくる。
こくん、と頷くと目を丸くされた。
「…素直すぎて逆に心配なんだけど」
「…いつも素直だし」
「へぇえ? そうだったっけ?」
「そうだったんですー!」
頬を膨らませると、ポンっと頭に手を置かれ、ふんわりと微笑まれた。
「…うん、知ってる」
たまの手のひらが、ぐしゃぐしゃっと俺の髪をもてあそぶと、頭を引き寄せられた。
頭の上にとがった感触がする。
「これ見よがしにあご置くんじゃねーよっ!」
「あは、ちょうどいい高さだからね〜」
「たーまぁぁー!」
容赦なく体重をかけてくる たまを退かそうと、両手で押し上げようとする。なのにその両手を取られ、たまの手が重なった状態で耳を塞がれた。
「? たま?」
「………」
たまが短く何かを言った。
耳を塞がれてるから、なんて言ったのかはわからないけど、たまの身体と接してる部分から振動が伝わってきた。
頭を抱え込まれている俺には、たまの衣装のジャケットしか見えない。
俺の耳を塞いでいた両手がゆっくりと離れていく。
顔を上げると、たまは真剣な表情のままで。
さっきまでのふざけていた雰囲気は欠片もない。
見つめられる視線になぜか心臓がドキっと音をたてた。
「たま、今なんて…」
「みつー! オレたち先に出るよー?」
ニカの声で俺とたまの間にあったものがプチっと、糸が切れたみたいになる。
縫い付けたようにたまから逸らせなかった視線をニカたちに向けると、すっかり帰り支度を整えたふたりが早くーっ! と手招きしていた。
「あ…」
「…行きなよ。見直しする時間なくなっちゃうよ?」
「…たま、」
「明日ゆっくり話そう」
「うん……」
「ほら、ニカがにらんでてめんどくさいよ」
「みーつぅー!」
あーもうわかったよ! ニカに大声で返事をして、たまを振り返る。
「じゃあたま、…また明日」
たまは頷くとにこにこと手を振ってくれた。
つられて俺も振り返す。
でも離れがたくて、躊躇ってしまう。
たまが困ったように笑い、俺の身体を反転させた。ポン、と軽く背中を押される。
「また明日ね、みつ」
その言葉に魔法から解放されたかのように身体が動き始めた。
急いで楽屋の奥に行くと私服に着替えて荷物を引っ掴んでニカたちに合流する。
楽屋内を見渡す。
そんなに時間は経っていないのに、たまの姿はなかった。
793人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Kmizusawa5110(プロフ) - お返事ありがとうございます。楽しく読ませて頂きます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 3f6429dfa1 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - Kmizusawa5110さん» Kmizusawa5110さん、コメありがとうございます。私自身、明るい読後感が好きなのでそれぞれが納得出来るように持っていきたいと思っています。パスは外しましたので、お好きな時にお読みください(^ ^) (2017年4月19日 18時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
Kmizusawa5110(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。みっくんと玉森くんと藤ヶ谷くんが良い結果になればいいなと思います。パスワード、教えて下さい。続き楽しみにしてます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 9aec22d661 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - yuriさん» yuriさん、いつもコメありがとうございます。メンバーサイドがある程度まで来たので次はやっと…という感じです。もう少し続きますが、また覗きに来てください(^ ^) (2017年4月18日 21時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
yuri(プロフ) - umenoさん、続けて更新嬉しいです。みんなの優しい気持ちでみっくんが楽になれますように。 (2017年4月18日 20時) (レス) id: c775aeb07a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:umeno | 作成日時:2016年9月25日 4時