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バタンッと乾いた音が響く。
ンン…という空気の揺れがなくなる頃、後ろ手に閉めたドアにもたれかかった。
たまに話すことを決めたのは自分なのに、今更ながらに足が震え出す。
無駄だと思いつつも、手でギュッと抑え込んだ。
「みつ?」
訝しげな声。
その声がする方に顔を上げると俺の勢いに驚いているのか、ニカが大きく目を開いて俺を見つめていた。
「なに? なんかあった?」
俺の様子がおかしいことに気付き、ソファから俺の方へ寄ろうと立ち上がる素ぶりを見せる。
「ニカひとり?」
「え? …あぁ、そうだよ」
ニカが歩き始める前に俺が話し出したので、ニカは大丈夫と判断したのか再びソファに座り直した。
俺が楽屋に入ってくるまではそうしていたのであろう、ソファとテーブルの上いっぱいに広げられてる資料に視線を戻して、俺との会話を続ける。
「千賀は?」
「千賀はトイレ。横尾さんと宮田はなんかさっき出てった」
姿の見えないメンバーたちの所在を教えてくれる。
その間、俺は自分に喝を入れるために太腿をつねった。
鈍い痛み。
自分の指の幅で出来るシワ。
指の先から下へと向かうシワが、下へ下へと落ちるスロープみたいだ。
たまに話したことは後悔していない。
でも たまの反応を思い出すと、間違っていないという自信はない。
…自信なんて、いつだってないけど。
「そういえば玉森は?」
ニカが口にした たまの名前に身体が揺れる。
「一緒じゃないの? たま、みつのこと迎えに行くってスタジオに戻ってったんだけど」
そういえば たまは迎えにきたと言っていた。
どう答えていいのかわからず、恐る恐るニカを見るとニカの視線は資料に落とされているままで、詰めていた息を緩める。
吸い込めるだけ息をし、短くふっと吐き出した。
「…さっきまで一緒だったよ。ニカたちにライブのこと確認したくて、俺だけ先に来た」
ニカが少し離れた場所に置いてある資料を取ろうとした動きを止め、その体勢のまま頭を上げた。
眉をひそめ、俺を見つめる。
「迎えに行ったやつ置いてきたの?」
…あ、
心臓が動きを早め、煽られるようにゴクリと喉が鳴った。
どう答えよう、と頭がフリーズする。
ニカと絡んだ視線を外せずにいたら、ふはっ、とニカが吹き出した。
「みつ、酷くね?」
玉森かわいそー! とケラケラ笑い始めた。
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Kmizusawa5110(プロフ) - お返事ありがとうございます。楽しく読ませて頂きます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 3f6429dfa1 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - Kmizusawa5110さん» Kmizusawa5110さん、コメありがとうございます。私自身、明るい読後感が好きなのでそれぞれが納得出来るように持っていきたいと思っています。パスは外しましたので、お好きな時にお読みください(^ ^) (2017年4月19日 18時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
Kmizusawa5110(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。みっくんと玉森くんと藤ヶ谷くんが良い結果になればいいなと思います。パスワード、教えて下さい。続き楽しみにしてます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 9aec22d661 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - yuriさん» yuriさん、いつもコメありがとうございます。メンバーサイドがある程度まで来たので次はやっと…という感じです。もう少し続きますが、また覗きに来てください(^ ^) (2017年4月18日 21時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
yuri(プロフ) - umenoさん、続けて更新嬉しいです。みんなの優しい気持ちでみっくんが楽になれますように。 (2017年4月18日 20時) (レス) id: c775aeb07a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:umeno | 作成日時:2016年9月25日 4時