25 ページ26
その音に追い立てられるように、俺は口を開いた。
「……藤ヶ谷に気持ちが向かうのが嫌だ。普通に接せれないのが嫌だ。そう思って俺の態度が不自然になってるんだと思う。そのせいで藤ヶ谷に謝らせるの、すごい嫌だ…」
収録前の藤ヶ谷を思い出す。
あの時、藤ヶ谷は謝ってくれたけど、あんな苦しそうな顔をさせたいわけじゃない。ましてや謝って欲しいわけじゃないのに。
藤ヶ谷が声を荒げた時に俺がもっとちゃんとした対応をしていれば良かったんだ。
それができていたら、あんな顔を藤ヶ谷にさせることなんてなかったのに。
「だから…」
「みつ、バカなんじゃない?」
俺の言葉を遮る、呆れたような怒ってるようなたまの声。
もしかすると両方なのかもしれない。
たまを見れば、眉間に刻まれた影がさっきより濃くなっている。
「みつの、そうやって人を気遣えるところはすごいと思う。だけどさ、ガヤのあれは違うでしょ?」
掴まれていた俺の手からたまの手が離れる。
解放された手に所在なく視線を落とした。
たまに握られていた部分が うっすらと赤さを浮かべている。
なにも答えない俺に、たまは言葉を続けた。
「ガヤだっていい大人だよ? 自分の感情をそのままぶつけていいのかどうかなんて、わかってた上で、あの場でそうしたのはガヤの自己責任だよ。それに対してみつが自分のせいだと思うのは、逆に思い上がってるよ」
そこまで言って、たまは息を飲んだ。
たまから発せられる言葉が痛い。
音を立てていた つま先が動きを止めた。
たまがハァと息を吐く音が聞こえると、ねぇ みつ、と名前を呼ばれた。
ゆっくり頭を上げると、少しだけ優しい色を持ち直した たまの瞳に捕らえられる。
「なんでも抱え込むことがいいことじゃないのはわかってるでしょ? それはみつにとってだけじゃない。ガヤにとっても俺たちにとってもだよ」
「みつが無理して抱えて苦しんでる状態が、俺たちにとっていいことだと思う?」
たまの言ってることは正論過ぎて、返す言葉もない。
耳触りの良い言葉を並べて言い訳してるって言われてるみたいで、いたたまれなくなる。
でも、それでも…
「ごめん、たま……」
うつむいて搾り出すようにそれだけ言うと、たまの横をすり抜けて足早に楽屋に向かった。
後ろから、みつ! とたまの声が追いかけてくる。
けど、振り払うように俺は楽屋に駆け込み、その勢いのままドアを閉めた。
793人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Kmizusawa5110(プロフ) - お返事ありがとうございます。楽しく読ませて頂きます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 3f6429dfa1 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - Kmizusawa5110さん» Kmizusawa5110さん、コメありがとうございます。私自身、明るい読後感が好きなのでそれぞれが納得出来るように持っていきたいと思っています。パスは外しましたので、お好きな時にお読みください(^ ^) (2017年4月19日 18時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
Kmizusawa5110(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。みっくんと玉森くんと藤ヶ谷くんが良い結果になればいいなと思います。パスワード、教えて下さい。続き楽しみにしてます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 9aec22d661 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - yuriさん» yuriさん、いつもコメありがとうございます。メンバーサイドがある程度まで来たので次はやっと…という感じです。もう少し続きますが、また覗きに来てください(^ ^) (2017年4月18日 21時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
yuri(プロフ) - umenoさん、続けて更新嬉しいです。みんなの優しい気持ちでみっくんが楽になれますように。 (2017年4月18日 20時) (レス) id: c775aeb07a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:umeno | 作成日時:2016年9月25日 4時