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たまを見ていると、単に自分が気にし過ぎているだけに思えてくる。
迷っていたら、訊くだけ訊いといて終わりだと気になるんだけどー! と たまが文句を言い出した。
その勢いに押されて、ついつい口にしてしまう。
「全部見透かしてるみたいに言うからさ…」
さっきまで教えろ教えろとうるさいくらいだった たまは目をパチクリさせて、そんなこと? とこぼした。
「今までわかりずらかった分、ちょうどいいんじゃない? 気持ち押し込めたって苦しいだけだよ」
「…そうだけど」
そんなこと、と言われてしまえばそうなのかもしれないけど…
わかっていても長年の癖というか習性をすぐに変えるのは難しくて慣れない。
たまに心の内側を指摘されるたび、恐怖に近い羞恥心のようなものに覆われて、息苦しい。
言い淀んだまま歩いていると、楽屋へ続く最後の曲がり角で たまが足を止めた。
つられて立ち止まると音もなく壁に手を置かれ進行方向を塞がれる。
その手を視線で辿れば、不服そうな顔のたま。
廊下の明かりが たまの頭に重なって薄っすらとした影を俺たちの間に落としている。
散々言ってるのに これだからおじさんは…と、たまが大げさにため息を吐く。
「あのね、俺はみつが好きなの。味方でいたいの」
「…たま」
「俺の前でくらいは我慢しないでよ」
ね? と、諭すみたいにゆっくりとした口調で話すたまが首を傾げて俺を見る。と、ふはっと笑った。
「ねぇ、なんでそんなに困った顔してんの?」
複雑に考え過ぎなんじゃない? と笑うたまに、きっとそうなんだろうと思う自分もいる。
それでも、長い時間をかけて絡まっていった糸は複雑さを極めていて、解こうという気持ちさえも萎えさせていく。
それならば、いっそ千切って捨ててしまえと頭の片隅でささやくもう一人の自分。
「みつ、楽屋戻ったらさ…」
「…たま」
「ん〜?」
楽屋に向けて歩き出そうとした たまが立ち止まった。
本当はたまに話すつもりはなかった。
だけど、味方でいると言ってくれた たまにすら向き合わなくて、どうやってこの気持ちにケリをつけるんだ、と思い直す。
それに いつかは話さなきゃいけない。
だったら、一番はたまに話したい。
「みつ?」
たまは動こうとしない俺を不思議そうに見ている。
一歩だけ近づけば、たまは「ん?」と微笑んでくれた。
「…俺、藤ヶ谷のこと好きでいるの、やめる」
たまの笑顔が、ゆっくりと消えていった。
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Kmizusawa5110(プロフ) - お返事ありがとうございます。楽しく読ませて頂きます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 3f6429dfa1 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - Kmizusawa5110さん» Kmizusawa5110さん、コメありがとうございます。私自身、明るい読後感が好きなのでそれぞれが納得出来るように持っていきたいと思っています。パスは外しましたので、お好きな時にお読みください(^ ^) (2017年4月19日 18時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
Kmizusawa5110(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。みっくんと玉森くんと藤ヶ谷くんが良い結果になればいいなと思います。パスワード、教えて下さい。続き楽しみにしてます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 9aec22d661 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - yuriさん» yuriさん、いつもコメありがとうございます。メンバーサイドがある程度まで来たので次はやっと…という感じです。もう少し続きますが、また覗きに来てください(^ ^) (2017年4月18日 21時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
yuri(プロフ) - umenoさん、続けて更新嬉しいです。みんなの優しい気持ちでみっくんが楽になれますように。 (2017年4月18日 20時) (レス) id: c775aeb07a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:umeno | 作成日時:2016年9月25日 4時