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収録を終えてゲストを見送り、スタッフさんたちに挨拶してスタジオを出た。
俺のせいでうやむやになっていたライブ構成の見直し部分の確認をニカとしておきたくて、楽屋に向かう足を速める。
前室を抜けて、廊下を挟んだスタジオ前のオープンスペースの前を通りかかったら、思いがけず藤ヶ谷の背中を見つける。
急いでいた足が自然と止まってしまう。
いつも収録が終わるとすぐに楽屋に戻るのに、めずらしい。
そう思ってよく見ると、藤ヶ谷の向こうにゲストだった俳優さんがいた。
藤ヶ谷は前に共演したことがあるんだっけと気付けば、収録中も親しそうに言葉を交わすふたりを目にしたことを思い出す。
俳優さんが冗談でも言ったのか、ふたりで笑い合ってる。
たまに見かける、メンバー以外と話す藤ヶ谷は全然知らない人に見えたりする。
そこでも藤ヶ谷は笑っていて、やっぱりその場に自分はいないんだな、と改めて思う。
見つめる先のふたりがぼんやりとしてきた。
…足、動かさなきゃ。
固まってしまった身体を動かそうとするのに、なかなかうまくいかない。
自分のことなのに一番うまくいかないな、とため息をついた。
「みつ?」
だいぶ先を宮田と歩いていたのに、戻ってきたらしい。
立ち止まっている俺を不思議そうに見ながら たまが歩いてくる。
近付いてきて俺が見ていた方に視線を向けると、藤ヶ谷たちの姿を認めたのか納得したように、あぁ、と声を出した。
「挨拶してくる?」
「いや、さっき済ませてるから」
「じゃあ、会話に混ざってくる?」
「…いい」
「羨ましそうに見てたのに?」
「……」
からかうような声色で覗き込んできた たまを無言でにらむと、ぷっと吹き出された。
俺の視線を避けるように明後日の方向を見て小さく笑い続けてる。
「…意地悪い」
「ごめんごめん」
「全然、心こもってないし」
こもってるよーって笑いながら言われても説得力ないから。
子供っぽいとわかっていても、プイッとたまから顔を背けた。
みーつ、と穏やかな声と一緒に頬をつつかれ、ムギュッとつままれる。
「楽屋、戻ろ?」
「…うん」
何回つまむんだ、と思いながらも大人しくうなずく。
向き直れば たまは目を細めて微笑んでいて、さっきまで捕らわれていた暗い気分が晴れていく気がした。
「あ、気づいた」
「え?」
たまの声に藤ヶ谷たちの方を見れば、さっきまで談笑していたふたりがこっちを見ていた。
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Kmizusawa5110(プロフ) - お返事ありがとうございます。楽しく読ませて頂きます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 3f6429dfa1 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - Kmizusawa5110さん» Kmizusawa5110さん、コメありがとうございます。私自身、明るい読後感が好きなのでそれぞれが納得出来るように持っていきたいと思っています。パスは外しましたので、お好きな時にお読みください(^ ^) (2017年4月19日 18時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
Kmizusawa5110(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。みっくんと玉森くんと藤ヶ谷くんが良い結果になればいいなと思います。パスワード、教えて下さい。続き楽しみにしてます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 9aec22d661 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - yuriさん» yuriさん、いつもコメありがとうございます。メンバーサイドがある程度まで来たので次はやっと…という感じです。もう少し続きますが、また覗きに来てください(^ ^) (2017年4月18日 21時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
yuri(プロフ) - umenoさん、続けて更新嬉しいです。みんなの優しい気持ちでみっくんが楽になれますように。 (2017年4月18日 20時) (レス) id: c775aeb07a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:umeno | 作成日時:2016年9月25日 4時