検索窓
今日:6 hit、昨日:16 hit、合計:244,912 hit

11 ページ12

横尾さんの所に来るだけって頭ではわかっていても、身体の反応は止められない。
藤ヶ谷から視線を外し、目をつむった。



「…みつ、ゆっくり息吐いて」


後ろから回されている たまの腕の力が強くなり、本当に小さな声でささやかれた。


言われた通りに息を吐こうとしても、ハ、ハ、と短くしか吐くことができない。
焦って胸元にある たまの腕を掴もうと、カクカクとぎこちない動きで力を込める。


胸元に回されていた腕とは逆のたまの右手が俺の手に重なった。



「大丈夫、あわてなくていいよ」


ギチッと握り込めていた指を開かれ、そのまま たまの手に包まれ下ろされる。


強張っていた身体が少し開いた気がして、ふーっと長めに息を吐けた。
詰めていた息を吐けば、ふるっと身体が震える。



「今度はゆっくり息吸える?」

たまにしか分からない程度に頷く。
ゆっくり、ゆっくり、吸い込むと新鮮な空気が身体中に巡っていくのがわかる。



「ん、上手」

たまの穏やかな声が聞こえて、気付く。



ああ、そっか。
息するのを忘れてたんだ。



そう気付くと強張りが少しずつ消えていく。


俺の身体の力が抜けたのがわかったのか、さっき包まれた手の、指の間に たまの指がするりと入ってきて、きゅっと握られた。




藤ヶ谷を見ると横尾さん、宮田と話していて、俯きがちだけど時々笑顔も見せている。

その様子に少しだけ安堵した。




もう一度たまに言われたように、ゆっくり息を吐いて、ゆっくり息を吸い込む。


後ろに張り付いているたまが、横から覗き込んできた。
その心配そうな顔の たまに微笑みながら、手を握り返す。



「藤ヶ谷」


できるだけゆっくりとその名を呼んだ。


ぴくりと肩を揺らして藤ヶ谷の動きが止まる。




横尾さんと宮田が俺を心配そうに見ているから、安心させるように微笑む。

ワンテンポ遅れて、藤ヶ谷が俺の方を向いた。



「さっきは余計な口出しして悪かったな。…手、ケガしてない?」

「……大丈夫」

「そっか、よかった…」


ほっと息を吐く。


藤ヶ谷の手に視線を向ければ、特に手当したあともないから、本当に大丈夫だったんだろう。





「太輔」


横尾さんが呼ぶと、藤ヶ谷の眉がぴくりと動いた。



ちょうど横尾さんはこっちに背を向けている形だから表情はわからない。


藤ヶ谷は横尾さんを見ながら黙っている。

12→←10



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (395 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
793人がお気に入り
設定タグ:藤北 , 玉北 , Kis-My-Ft2   
作品ジャンル:タレント
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

Kmizusawa5110(プロフ) - お返事ありがとうございます。楽しく読ませて頂きます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 3f6429dfa1 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - Kmizusawa5110さん» Kmizusawa5110さん、コメありがとうございます。私自身、明るい読後感が好きなのでそれぞれが納得出来るように持っていきたいと思っています。パスは外しましたので、お好きな時にお読みください(^ ^) (2017年4月19日 18時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
Kmizusawa5110(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。みっくんと玉森くんと藤ヶ谷くんが良い結果になればいいなと思います。パスワード、教えて下さい。続き楽しみにしてます。 (2017年4月19日 18時) (レス) id: 9aec22d661 (このIDを非表示/違反報告)
umeno(プロフ) - yuriさん» yuriさん、いつもコメありがとうございます。メンバーサイドがある程度まで来たので次はやっと…という感じです。もう少し続きますが、また覗きに来てください(^ ^) (2017年4月18日 21時) (レス) id: f6011e37f2 (このIDを非表示/違反報告)
yuri(プロフ) - umenoさん、続けて更新嬉しいです。みんなの優しい気持ちでみっくんが楽になれますように。 (2017年4月18日 20時) (レス) id: c775aeb07a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:umeno | 作成日時:2016年9月25日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。