カクテル 08 ページ8
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駅まで送るよ、と言ってくれた那須くんの好意に甘えて一緒にBARを出た。
さっきよりも夜が更けて 欠けた月が空で存在を主張する。それと同時に肌寒さもよりいっそう際立つ。
寒いなあ、まだ夏なのに。…いや、秋?
火照った体はすうっと冷めていく。
「寒いの?」
「うん、ちょっとだけ。服装ミスっちゃった」
「俺のジャケット貸してあげるよ」
「いいよ、那須くんも寒いでしょ?」
「ううん。むしろ暑い、だから受け取って?」
「…本当にいいの?ありがとう」
肩にかけられたジャケットからは、昨日ベッドで香った香水が染み込んでいて。体格差があるからか、案の定だぼっとしている。
…那須くんって大きいんだ。
昨日出会ったばかりの人をこんなに意識するなんて、私らしくない。
黙っていると昨日の事を思い出してしまいそうで。隣を歩く那須くんに話しかけようと考える。
シャツの裾をつまむと、「どうしたの?」と言いながら立ち止まってくれた。
わ、話題。どうしよう!
焦った私の口から出たのは、共通の友人、飛貴の名前だった。
「…な、那須くんって飛貴と友達なんだってね、今日聞いたよ」
「浮所?…あー、そっか、Aちゃんと同じ大学だったね」
「そーそ。飛貴って昔からきゃんきゃんうるさいの?」
「どうだろう…。てか、下の名前で呼んでるんだ?」
裾を掴んでいた手は、いつの間にか那須くんの手のひらの中にあって。
道中、それが離れる事はないまま駅に着いた。
…振り払える力加減だったのに、私は拒まなかった。
「Aちゃん、また、会えますか?」
少し先を歩きながら私の手を引く那須くんの耳が、真っ赤だったから。
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Mappy(プロフ) - 最後の場面とっても素敵ですね! 思わず二度読んでしまいました (2020年3月21日 23時) (レス) id: dbbbb4e0c8 (このIDを非表示/違反報告)
pii27(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます!飛貴くんとくっついて欲しいような気もしちゃいます笑! (2019年10月9日 13時) (レス) id: 55d6c8d2d6 (このIDを非表示/違反報告)
まお - 続きが楽しみです! (2019年9月23日 9時) (レス) id: 4581f1bec1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蕎麦リアン | 作成日時:2019年9月21日 20時