101話 ページ6
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もう3パートに渡って続いている萬屋ヤマダのご依頼篇についに幕が下ろされる。
ピシッとしたスーツを身に纏って、珍しくネクタイを締めて、普段ガチガチに固めてるオールバックをおろして萬屋ヤマダの前に佇む俺はヨコハマのしがないヤクザだ。
緊張して震えている手でインターホンを押した。
一郎『はーい』
佐伯「あ、あの!自分、佐伯ハルトと申します!宮野さんにここを訪ねるよう言われて参りました!」
一郎『宮野さんに・・・まさか・・・!わかりました、今開けます!』
ドタドタという足音がしたと思ったら、自分より年下っぽい好青年が出迎えてくれる。
ソファに座っていると「粗茶ですが」と言って冷たい麦茶を出してくれた。優しい。
佐伯「えっと、弟のフユトと妹のナツエがこちらでお世話になっているという話を伺いまして・・・」
一郎「お二人のお兄さんなんですね!厳密に言うと、ナツエさんがご依頼でいらっしゃいまして」
佐伯「ナツエが依頼を?」
一郎「はい。ちょうどお兄さんのお耳にも入れておきたいと思っていたので本当に助かります」
依頼の一部始終を聞かされた。
なかなかに大変なことになっていたらしい。今の今まで気づけなかった自分が情けなくてしょうがない。
金ばっかり援助して、彼らの実生活を見ようとしなかったことが原因だと思う。
佐伯「ほんとすみませんでした。私がもっとちゃんとしていれば・・・!」
一郎「いえいえ、お兄さんがお気になさることではありませんよ。ナツエさんはお兄さんに隠そうとしていましたし気付けなくて当然だと思います」
佐伯「お気遣いありがとうございます・・・」
一郎「俺も弟が二人いるので、なんとなく気持ちがわかるんです。もっとしっかりしないとって」
長らくこんな優しい会話をしてなかったから、なんだか涙が出てきそうになった。
カシラも妹さんがいて俺には何かと優しくしてくれてるけど、そこにカタギの優しさはない。
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作者名:梅昆布茶 | 作成日時:2023年11月22日 13時