▷ 別れ ２ ページ15
「どうした？腹でも痛いのか？」
「……ぐずっ、い、痛く、ないﾞっ！」
「じゃあ何があった？もしかしておれ、お前に何かしたか？」
私がルフィの問いかけに首をブンブンと横に振ると、きゅっと口を真一文字に結んだルフィが、普段の笑顔の面影が一切無い表情で静かに私を見つめる。どうして自分がルフィに引越しを伝えないといけないだけで泣いているのかが、分からない。分からないけど、どうしようもなく胸の奥がきゅうきゅうと切なく音をたてて、まるで縛り上げられたように痛みを訴えてくるのだ。
ぽろぽろ、と大粒の涙が頬を伝って地面にシミを作る。ルフィの顔を見ているのが辛くて、泣いているところをまじまじと見られたくなくて、彼の視線から避けるように俯くと、ルフィが「目、逸らすな」と言い、両手で私の頬を挟み込んで顔を上げさせる。先程よりも至近距離でかち合った視線にドクンと心臓が一際強く鼓動した。
そしてルフィは、また同じことを問いかけてくるのだ。
「A、何があった？」
……言わなければならない。貴方と一緒にいられなくなるということを。いつになく真剣な瞳で見つめられては、もうダメだった。
僅かに開いた口から小さな嗚咽が漏れ出る。
「あ、のね、ルフィ、」
「おう」
「わたしっ、わたし……この村を、出ていくことに、なったの……」
「……！」
彼に伝えなければならないことが口から言葉として出てくれた。言葉にしてしまうと、尚更涙が溢れて止まらなくなってしまった。そして私はようやく気が付いたのだ。
(わたし、ルフィと過ごす時間が大好きだったんだ……。だから、こんなにもルフィと離れ離れになることが苦しいんだ……)
私の言葉を聞き、大きく目を見開いて驚いた顔をしているルフィ。
「どうしても、行かないとなのか？」
「うんﾞっ……」
「いつ、引越しするんだよ」
「準備でき次第すぐにって、言ってた……。だからたぶんだけど、明日には……」
「あした……」
具体的な別れの日を伝えると、ルフィは「なんでっ！」と涙が滲んだ声でぽつり、と呟いた。その声に釣られるようにルフィの顔を視界に映すと、ルフィの大きなころころとした目には、瞬きをしてしまえば今にも溢れだしそうなくらいの水の膜が張っていた。そんな彼の姿に、また胸が締め付けられる。
別れを惜しんでいるのは私だけではないのだと分かった途端、少しだけ胸の奥がぽかぽかと温まった。
「おれ、そんなのイヤだ……っ！！」
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