▷ 別れ ページ14
「……え、引越し?」
「えぇ。この辺りも最近物騒になってきたでしょう?この間も山賊が出たり、なんだかんだずっと海賊も停泊していたわけだし……。隣の村にね、お母さんが小さい頃に住んでいた家があるの。だからそっちに引越ししましょう。ね?」
__何でもない日は、突如終わりを告げた。
当たり前といえば当たり前だったのかもしれない。ルフィと毎日のように朝早くから夜遅くまで外を出歩き、時には怪我もして帰ってきて。親としては、いつ何が起こるか分からなくて気が気じゃなかったはずだ。それに加えて、つい最近フーシャ村で起きた海賊と山賊の衝突を知ってしまったら、お母さんがこういう決断に出ることも納得出来てしまった。
いやだ、という言葉は口から出なかった。言えなかった。もしもここで私が嫌だと駄々を捏ねればお母さんが困ってしまうことが目に見えていたから。だけどそれと同時に脳裏にチラつくのはルフィの顔だった。
用意ができ次第、すぐにでも引越しするそうだ。いつルフィに引越しのことを言えばいいのか分からず、お母さんに引越しのことを言われたその日の夜は一睡もできなかった。
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それでも朝はやってくる。そしてルフィも、いつものように家を訪れてきた。家を出る直前、お母さんから「ルフィにもちゃんと引越しのこと伝えるのよ」と言われてしまったので隠すという選択はできなくなった。
シャンクスさんとの1件から、以前にも増してルフィは海を見るのが好きになった。だから私と遊ぶ時もここ最近は海に行って、“ルフィが海賊になったら”の話をすることが日課。それももう終わりを迎えてしまうけれど。何も知らないルフィは、どういう人達を自分の船に乗せるか考えているようだ。
ルフィの口から真っ先に出たのは「音楽家」だった。
それに対して「航海士と料理人は、すぐにでも必要なんじゃない、かな……?」と言うと、ルフィは面食らった表情を浮かべて「それもそうだ!!」とあっさり納得した。
「Aには何の役割を任せっかな〜。悩むなあ……うーむ……」
「……」
……ルフィは、本当に私のことも海に連れていく気だった。私なんかいても何も役に立たないのに、連れていこうだなんてやっぱりルフィは変な人だなあ。
私はもうここにはいられないのに。ルフィのそばに、いられないのにな。
「……A、なんで泣いてんだ?」
「え……」
ルフィの言葉で、私は自分の頬に伝う涙にようやく気がついた。
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