▷ 幼少期 １２ ページ13
＿＿その日、私は
「ルフィ……！」
悪魔の実を食べ、一生泳げない体に成り果ててしまったルフィは山賊に小舟から海へ蹴り落とされてしまった。ルフィが溺れてしまうと思ったとき、山賊の乗った小舟のすぐ後ろからザバアッ！と波が浮き上がると共に、その中から見たこともないくらい大きな魚が顔を出し、大口を開けて小舟ごと山賊をバクンと食べてしまった。
その光景に唖然として、ぽかんと口を開いたままその場に立ち尽くす。その大魚が次の狙いをルフィに定めて食らいつきに突進したとき、寸前の所で海に飛び込んでいたシャンクスさんがいつの間にかルフィの元に辿り着いており、その体を大魚から守るかのように抱き寄せていた。
そしてたった一言だけ「失せろ」と言うと、あれだけ凶暴だった大魚は酷く怯えた様子でこれ以上は何もせずに海の中へと潜っていった。
＿＿それでも、無くしたものが大きかった。
「シャン、クスさん……う、腕が……！」
「なあに。気にするこたぁないさ。ルフィもAも、無事でよかった」
「うっ……うぅ……うわあああああっ！！！」
片腕でルフィを抱きながら陸に戻ってきたシャンクスさんには左腕が無かった。あの大魚からルフィを守った時に持っていかれたのだと、瞬時に悟った。びしょ濡れのままシャンクスさんの体にしがみついて泣きじゃくるルフィ。そして笑顔を少しも崩さないままルフィを抱きしめるシャンクスさん。
この日から、ルフィが「航海に連れて行ってくれ」と言うことは無くなった。
⚚
「シャンクスさん……」
「Aか。さっきルフィも来たぞ。今日は一緒じゃないんだな」
今日はシャンクスさん達がこの港から出る最後の航海。もう、この港にシャンクスさん達が戻ってくることは無い。
「……苦手、だったんです。あなたが、あなた達が」
「おう」
「でも今は、皆さんが好きです。悪い人じゃ、なかった。あのとき、ルフィを守ってくれたから。……本当に、ありがとうございました」
「……A、おれと一緒に来るか？」
「……え？」
トレードマークである麦わら帽子を身につけていないシャンクスさんはいつもとどこか雰囲気が違う。私と目線を合わせるようにしゃがみ込んだシャンクスさんは少しの沈黙を置いた後にニカッと笑うと、乱雑に私の頭を撫で回した。
「ジョーダンだよ！いっぱい食べて大きくなれ！」
別れの最後まで、どこまでも彼は彼だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
