【コラボ】混ぜても危険物販売取扱所【短編集】 (ページ14)

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私と俺と充電器/trppy ページ14

最近何もかも上手くいかない。
例えば、ゴミ出しの日にゴミ収集車がいつもより早くゴミを回収したり。
電車にすんでのところで乗り遅れたり。
仕事でコピー機の調子が可笑しかっただけなのに何故か私が怒られたり。
酔っ払いのオジサンに絡まれたり。

今日だって、彼氏の家に行くから楽しみで、前に彼が好きだと言ってくれた服を着て彼の家に続く道を歩いていただけなのに。
交差点、曲がり角、前を見ず走り来る少年。
無邪気な笑顔と手に持ったチョコアイスは私の服に吸い込まれるようにぶつかった。
幸い相手の少年に怪我はなかったけど、服も心もぐしゃぐしゃで彼の家に着いて。

｢はーいいらっしゃ、うわぁ！服…どうしたのそれ｣
｢ここ来るまでにチョコアイス持った子とぶつかっちゃって。洗濯させてもらっていいかな？｣
｢それは災難だったね…俺の服貸すね、待ってて｣

とたとたと足早に部屋の奥に消えて、またすぐに戻って来る彼。はい、と渡されたパーカーと短パンに着替える。それらからは彼の洗剤のいい匂いがする。

｢こーら、そんな嗅がないの！はずかしい！｣

照れ臭そうに笑う彼に、今まで耐えていた涙が不意に溢れ出して。

｢…A、なんかあったんでしょ。おいで｣

ぐっと腕を引かれて連れていかれた先はソファ。彼が座った上に向かい合って座る形になる。いくら彼氏と言えども泣いている姿なんて見られたくなくて、彼の方に顔を埋める。

｢よーし俺が元気充電してあげる｣

ぽんぽんと一定のリズムで背中を叩かれ、嗚咽が漏れ出してしまう。

｢うっ…ひっ、ぐす、とりっ、ぴぃ、｣
｢うん、ちゃんとここに居るよ｣
｢ぐす、やだ、もっ、やだぁ…｣
｢大丈夫だよ、Aは出来る子なんだから｣

顔を見なくても、優しい顔をしていることがわかる。でも今は、不安で仕方ない。

｢とりっぴ、ぃ、嫌いに、ならな、いで｣
｢俺がAのこと嫌いになるわけないじゃん、馬鹿だなぁ｣

クスクスと笑うと耳元に吐息が当たってくすぐったくて、思わず笑ってしまう。

｢あ、やっと笑った。でももうちょっとこのままでいよっか。｣
｢っ、え？｣
｢んー、今度は俺に充電させて。…いいでしょ？｣

ぎゅ、と苦しいくらいに抱き締められる。
これが彼なりの気遣いなのかそれとも私欲なのかは良くわからないけど、負けじと私も彼の背中に手を伸ばすのだった。