【短編】道端に咲く花【実l況l者】

純情に溶けて【trp】＊ ページ21

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｢とりっぴぃ先輩｣





放課後、人が殆ど来ない校舎裏でこの先輩は1人日陰でアイスを食べていることを私は知っている

9月なのにまだ暑いからかスボンの裾をまくり短パンに近い状態で廊下を歩くような先輩、正直普段ならあまり関わりたくないタイプ

でも違う、この人は優しいってことも知っている





｢おー、Aちゃん｣

｢またアイス食べるんですか？好きですね、それ｣

｢そー、これ好きなんだよなぁ、でも今日はAちゃんの分無いんだわ、ごめん｣






その証拠に私の名前を優しく呼び手を振ってくれる、手には食べ終わったらしいアイスの棒を持っていたがすぐにそれを捨てコンビニの袋からまた新しいアイスを取り出す

3ヶ月前、私が中学の頃付き合っていた彼氏に振られて誰もいない此処で泣いていたときも突然そのアイスを差し出し困った顔をして笑って話を聞いてくれた

すぐその純情さに溶けてしまった私がいた






｢先輩、好きです｣

｢……ごめん、俺好きな人いるから｣






突然の告白に少し驚いた顔をしたけど先輩は申し訳ない神妙そうな顔で自分が振るのに悲しそうな声でそう言った、分かっていたことだった

知ってます、A先輩ですよね、と震える声で呟く、やっと諦められる、そう思うと涙が出そうだった

目の前にいる先輩はそんな私に気付かずA先輩と言う単語に反応して恥ずかしそうに顔を赤め慌てていた、さっきまで神妙そうな顔で私の告白を断ったくせに

やっぱり好きなんですね、A先輩可愛いしスタイル良いし性格も愛らしいし……




憧れていたA先輩のインスタでとりっぴぃ先輩との投稿を見つけたとき、2つのショックを受けた

好きな先輩と憧れの先輩が一緒に遊びに行ったという事実と私の知らない顔をする先輩がいたこと、好きなんだな、って直感で思ったぐらい分かりやすい顔してたもん

やっぱり、私じゃ叶わないか、そう思うとやっぱり苦しくて悔しくて悲しくて涙が出た、でも見られたくなくて下を向く

私が泣いているのに気付いたのか先輩は近付いて私の顔を覗く、一番最初会ったときと同じようなことを言う






｢えっ、とアイス食う？食いかけだけど｣






ほらまた、そうやって私に優しくする、私好きだって言ったのに伝わってない鳥頭め

困った顔をして私に向かって笑ってアイスを差し出してくれる先輩、純粋に優しいだけの先輩

あーもー、日に当たって溶けるのはアイスだけにして欲しかったぐらいだ

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