一匹の悪役の話 (ページ20)

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16話ページ20

「みなさんみなさん！
リクルーティングの事がツイッターで話題になってます！」

休憩中、スキャターがなにやら四角い板を持って駆け寄ってくる
確かあいぱっと、とか言う連絡手段だったはずだ

皆んながスキャターの周りに集合し覗き込むと、なにやら文字がたくさん綴られた画面が映し出された

“手下のダンスやばい！めっちゃかっこいい！”

“メンズヴィランズの色気すごくない？”

“ヴィランズレディーかわいすぎ、絶対もう一回見に行く”

“これ見て！関係性めちゃくちゃ気になる！”

沢山の写真と共に綴られた文字は、どうやら複数人の感想のようだ
アップルのポーズの写真、マルフィの笑顔、ハーデスのすまし顔、そして

エイトフットが私の肩を抱いている写真まであった

「みなさん撮られた写真をこうして載せてくださってるんです！」

「うちの写真もあるやん！なんやよく撮れてるわぁ」

「…おや？この写真…」

「転びそうだったから支えただけだ」

「…まだ何も言ってないよ？」

ちっ、と舌打ちをし輪から離れて行く彼を見ると、
なんだかくすぶってた怒りが収まっていくように感じた

他のヴィランズと同じように、彼も仲間意識が強いのだろう
だからこそ仲間を危険に晒す可能性をできるだけ排除したかったのかもしれない

たとえ自分の予想が外れたとしても、嫌われるのは彼一人

そう考えると、彼を許してみよう、という思いが顔を出す

傷付けられた事実は変わらないけれど
彼も言いたくて言ったわけではない

謝罪が一度聞けたなら、とエイトフットの背中を見て、心に決めた

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リクルーティング中には、男女のペアダンスがある
今日最後のペアダンスの相手はマルフィ
彼のリードはこちらがとても踊りやすいため気が楽だ

音楽に合わせ彼の手を取りくるりと回る

すると

ぐっ

『へっ？』

“きゃー！！！！！”

そのまま肩を抱かれた
観客からは悲鳴に近い黄色い声
驚く私をよそに、笑顔のまま最終ポーズをとる位置に私をエスコートするマルフィ

『ま、マルフィ？』

「いつも同じだと飽きてしまうからね」

いまいち納得のいかない返答のせいで、私は微妙な表情のままポーズをする姿を人間達に撮られるはめになった

このマルフィの行動を境に、リクルーターのみんなは段々とアドリブをいれるようになってしまう
ミスターや観客は楽しそうだから…まぁ良いのかもしれないけどね