一匹の悪役の話 (ページ21)

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17話ページ21

今日のリクルーティングも無事終了し、今は夕飯前の自由時間

長らく買えていなかった部屋の時計を買う為、私はパーク内の買い物エリアへと足を運んでいた
外見はバレないようにとミスターが魔法で変えてくれている

初めて一人で歩くパークはとても広く、様々な背格好の人間達がみんな楽しそうに笑顔を浮かべていた

『んー…店が多すぎる…』

しかしいつまでもうろうろしている訳にはいかないため、とりあえず目の前にある店に入ってみる事にした

扉を通ると目の前に広がるのは、いくつもの棚と色とりどりのグッズ、服、雑貨、お菓子
照明は明るく店全体と商品を惜しげもなく照らす
区画ごとに区分されているその空間は、閉園間近ということもあり多くの人で混雑していた

『うっわー…見つかるかしら…』

こんな時間にくるんじゃなかった、と後悔しつつも、早く買い物を済ませてしまおうと店内を歩く
ずっと人気のない深海にいたからか、この明るい空間は私には少しきつかった

ふと、視界の端に入った青に気付き足を止める

少し小さめのその青は、お目当ての置き時計
貝殻やサンゴの形をした装飾が少しだけ周囲についているそれは、周りにある主張の激しいグッズとは違いどこか上品さを感じる
なにより深い青は生まれ育ったあの海を彷彿とさせた

気付いた時には、すでに私の手はその時計へと伸びていた

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思いの外早く買い物が終わり、また予想以上に好みのものを買えたおかげで私の機嫌はとても良い
鼻歌を歌いながらホテルハイタワーに向かう足取りはとても軽やかだろう
このパークにあんな良いものが売ってるなんて知らなかった

気分が上がりいつもより周りをキョロキョロと見渡しながら歩いてると、ふいに私の前方に１つの赤毛が現れる

あの姫様と同じ赤い髪

どくん

さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返る
赤は徐々に私に近づく

どくん

人混みのため顔は見えない

どくん

あと10歩ほどの距離に赤がある

どくんどくん

赤が私に近付いて

『アリエル…！！！！！』

憎い
恨めしい
苦しい

赤に手を伸ばし
その首を

「マミ」

『！！』

赤毛の首を掴もうとした瞬間、横から何者かが私の手を掴んだ
びくり、と肩が跳ねる
さっきまでの静けさは姿を消し、また喧騒が戻ってくる

手を掴むその人の顔を見上げると、彼はいつもの優しい笑みを浮かべた

『…………ジャックハート…』