一匹の悪役の話 (ページ17)

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13話ページ17

…

どれくらい時間がたっただろうか
昨日できなかった書類を一通り終わらせ、疲れの溜まった肩をぐるりと回す

部屋に時計はまだつけてない、というか、買う暇がなかった
というのも、休みらしい休みはこちらにきてから今日が初めて

一息ついたら時計を見に行くのもいいかもしれない

気分転換を、と思って廊下を出たが、途中で足を止めた
テラスにはもしかしたら……エイトフットがくるかもしれない
さすがに彼と休日に出くわすのはなるべく避けたい

…なんで私がこんなに気を使わなくちゃいけないのよ…

盛大なため息をひとつこぼし、テラスのかわりに広間に向かった

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「あら、仕事はひと段落ついたの？」

『ハーデス！』

ゆら、と彼女の頭の炎がゆらぐ
全身を綺麗な青で染めた美しい彼女を見ると、冥界の炎とはこんなにも綺麗なんだろうかと思わずにはいられない

彼女はなにやら新聞を読んでいたようで、一度私に向けた目線をすぐに下に向けてしまった

「あなたのマスターは手下使いが荒いのね、慣れない環境に行った者に通常通りの仕事をさせるなんて」

『んー、でもそこまで辛くはないわ
むしろ書類を見て海での仕事を思い出せるから』

「…変わってるわね、まぁご勝手に…」

ふと、新聞をめくる手が止まる
不思議に思い前から記事を覗くと、ハーデスは私が見やすいように記事を机の真ん中に置いてくれた

『ありがとう…えーっと…

“昨夜未明に狭間の悪夢が封印から脱走”…？

…狭間の悪夢？』

「…知らないの？」

『ヴィランズになってまだ数年だから、知らないこと多くて…』

「そう…
狭間っていうのは、現世と我々ヴィランズ界の間にあるの
あるっていっても空間が広がっているだけ、特に何かが建っているわけでもないのだけれど…容易に出入りできる場所じゃないわ
莫大な魔力も必要だし…
そこに昔、各世界で散々暴れていた悪夢を、どこかのマスターヴィランズが狭間に封印したと聞いたことがある」

『暴れていた？』

「各世界の住人もヴィランズも関係なく殺して回ってたのよ
目的なんか知らないわ…
で、自分の部下を殺されたマスターヴィランズの怒りに触れて孤独に封印されてたってわけね」

ぱたん
ハーデスが新聞の記事を閉じる

『それってだいぶ危険なものなんじゃ…』

「狭間はいるだけで魔力がどんどん吸い取られるの
そこに数十年はいたんだもの、運良く出られただけの死にかけよ…」

『…それならいいんだけど』