東矢の眼 ページ16
挿し絵はイカノに描いて貰いました
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昼下がりの事務所、相変わらずのんびりと過ごす東矢に、奏乃がふと疑問をぶつけた。
「そういえばなんですけど、草薙さんってどんな基準で怪人を助けてるんですか?」
「あー、そうだな…」
ポリポリと頭を掻いた東矢。
少し考えて、口を開いた。
「…眼、かな」
「眼ですか」
「おう。何となく眼を見てっと分かってくるんだよな。もうこれに関しては慣れって言うか…長年の勘とも言うか?」
「へぇ…具体的にどんな感じかわかります?」
「んー、そうだな…」
少し悩んで、また言葉を紡ぐ。
「眼に光が宿ってる奴か…何かに酷く怯えた眼してる奴…あと
は…」
東矢は一瞬それを言葉にすることを躊躇ったが、すぐに口を開いた。
「…誰よりも、綺麗な眼してる奴、かな」
「へぇ…凄いですね…そんなこともわかるんですか」
「おう。そういう意味だとな、奏乃の眼は凄く綺麗だな」
「ふえあっ!?」
急にずいっと顔を寄せてきた東矢に思わず声が上ずってしまう。
「一見光が無いような無機質な瞳に見えるが…その奥底にはちゃんと光が刺してる。典型的な優しい奴の眼してんだ」
「…そう、ですか…」
自分の瞳を褒められたのは、初めてだった。
今までこの虚ろな瞳のせいで蔑まれてきたから。
こんな、一切の光が無いようなどえしようもないくらい怪しい眼。
そこに、確かに光はあるのだと。
そう言ってもらえたのが嬉しくて、思わず頬が緩んでしまう。
「…ふふ、そうですか…でも、草薙さんの眼も綺麗ですよ」
「ん、そうか?」
「そうですよ、こんなキラキラしてて明るくて綺麗、で…」
しげしげとその瞳を眺めていたのだが、ふとその眼が自身の瞳にのみ向けられていることを自覚してしまった。
見つめ合ってしまっている。
その事実に堪えきれず、思わず赤くなった顔を逸らしてしまう。
「?どうした奏乃…」
「っ、いえ…何でも、ない、です…」
「おう、それならいいんだが」
…結局、私の片想いなのかな。
草薙さんには、私のことはただの仲間にしか見えてないんだろうなぁ…
そんな気弱な独り言は、そっと胸に秘めたまま。
一体いつになったら、丸一年溜め続けてきた想いを明かせるんだろうか。
長く長くため息をつき、またソファにダイブしクッションに顔を埋めた奏乃だった。
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 x他1人 | 作者ホームページ:http
作成日時:2023年3月8日 14時