偽りの世界に差した、一筋の光 ページ14
…でも、いつまで経っても痛みは感じなかった。
｢っ…ぎぎ…！｣
代わりに聴こえてくるのは、目の前に立つ怪人の歯軋りの音。
何だと思って目を開けてみれば…
｢…目の前で女性が襲われてるってのに、見て見ぬふりするなんて…ヒーローどころか、男として失格だろ？｣
｢こんの…！｣
なんと素手で、その鋭い爪を携えた怪人の両腕を掴んで止める男性の姿であった。
私には、その背中が凄くかっこよく見えていた。
｢よっと｣
振るわれた右手。
怪人の横に無造作に置かれていた段ボールの山が、怪人の体を覆い尽くした。
｢立てるか？｣
｢あ、はい…すみません…｣
｢気にすんな。同業者なんだから、助け合うのは普通だろ｣
差し出され手を取り、なんとか立ち上がる。
当たり前のように言い放つ彼の目線が、炸裂した段ボールの塊だったものに向けられた。
｢馬鹿にしてんじゃねぇぞお前！！｣
｢あ、危ないっ！｣
激昂した怪人が襲いかかってくる。
思わず彼を守ろうとしたが…
｢がっ!?｣
怪人の体を、何かが貫いた。
｢このくらい…せめて残像が見えてくるくらいでもなけりゃ撃てるさ｣
いつの間にか彼の手には銃が握られており、その銃口からは煙が立ち上っていた。
｢てんめぇ…!?｣
｢遅いわ｣
次々と放たれる銃弾が怪人の体を的確に捉え、その爪をへし折った。
｢ぎゃぁ、あ…クソ…｣
体中を撃ち抜かれ、怪人は倒れた。
すぐに彼は怪人の体を拘束して、そのまま連絡を済ませていた。
｢…大丈夫か？｣
｢あ、はい…｣
｢そうか｣
に語り掛けてきた彼に言葉を返せば、彼心底安心したように私に笑顔を向けた。
｢あの…あなたは…？｣
｢ん、俺か？…草薙東矢だ…またの名を、ノーブルグリーン｣
｢…！｣
聞き覚えがある。
確か、ランキング下位の…
｢私は…唐沢奏乃…シャイニー、です｣
｢あぁ、知ってる｣
｢えっ…じゃあ何で私を…!?｣
私は世間一般で、酷く嫌われている。
全部こんな明らかに闇系で暗い見た目と不釣り合いな能力のせい。
そんな私を助ける理由なんて…
そう、思っていた。
｢何でって…決まってんだろ。困ってる奴は助ける、それだけさ｣
…その時から私は、彼…草薙さんが私にとっての光のように感じるようになった。
私と草薙さんの、初めての出会いだった。
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作者名：クロロフィル@深緑の指揮者 x他1人 | 作者ホームページ：http
作成日時：2023年3月8日 14時
