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弱き怪人 ページ11

「…」

路地裏の物陰にそっと身を潜め、震える腕を押さえる少年がいた。
彼の目線の先にあるのは、一軒のスーパー。
ここらではかなり品揃えが多く、主婦達の頼りになる場所である。

そんな場所を、彼はじっと見つめていた。

「…あそこをおそえば…お金がもらえる…おかあさんはたすかるんだ…!」

その希望を浮かべた言葉とは裏腹に、少年の顔は青い。
今にも倒れてしまいそうである。

…その時だった。

「おう、何してんだ坊っちゃん」
「ひゃあっ!?」

突然背後から声をかけられ、思わず驚き腰を抜かしてしまった少年を、彼は優しく手を差し伸べ立たせてやる。

「あ、どうも…」
「おう、気にすんな。…で、今何しようとしてたんだ?」
「あ…」

その質問を投げ掛けられ、思わず縮こまってしまう。
自分が今からしようとしていたことが間違っているとわかっているから、怒られるのが怖い。

「…あそこを襲おうとしてたのか」
「ぁ…」

怖い。
その一心だが、自然と頷いてしまった。

「そうか…」

そう言って立ち上がった彼に、酷く恐怖心を抱いていた。
もしかしたら、殺されるかも…!

「落ち着け」
「ひゃっ!?」

呆れたように頭にぽんと手を置かれ、思わず声を出してしまう。

「…何で、そんなことしようとしたんだ?ホントはやりたくなかったんだろ?」
「え…あ…?」

しかし、飛んできたのは怒りや叱責の類いではない。
心配そうな声と、問いかけであった。

まっすぐ見つめられ少し混乱しつつも、必死に言葉を紡ぎ始めた。

「…おかあさんが、びょうきなんだって…それで、なおすのにお金がいるって…!だから、お金がほしくて…!」
「…怪人に、なったのか」
「…うん」

悲痛そうな顔をして頷いた彼は、少しして少年の頭を撫で始めた。

「わっ…!?」
「偉いな…母親の為に自分が頑張れて…怖くても必死にやろうとして…」
「え…?」

その口から出てきたのは、柔らかい肯定の言葉。

「…えらいの?」
「あぁそうさ。お前はカッコいいよ。だからこそ、お前には
こんな仕事向いてない。早く辞めちまえ」
「で、でも!お金…!」

…世の中の怪人というのは、大きく分けて二種類存在している。
自ら怪人になったか、怪人になってまで働かざるを得なかったかだ。

後者は一定数存在する、謂わば生きていくために、あるいは誰か大切な人のために金が必要になってくる者が大半であり、ここが恐ろしいところでもある。

立場的に弱い者を利用し、悪の限りを尽くさせる。

東矢が何よりも嫌う物なのであった。

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設定タグ:勇者 , ヒーロー   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 x他1人 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2023年3月8日 14時

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