警視庁は知っている

ランニング ページ3

いち、にい、いち、にい。

いつもと違うコースを一定のリズムで走る。走るのはとても気持ちがよく、心地よい。
走る前は嫌だった顔を切っていく風も慣れれば何て事ない。むしろその方が自然な気がする。

とんとんとんとん。

私の走る足音に重ね、他の誰かの足音が遠方から聞こえる。その人もランニングをしているようで、私よりも少し速いペースでリズミカルに足音が聞こえる。

あれ。

ランニングをしているであろうその人の人影が

見えて私は気付く。


黒木君だ。

そう分かった瞬間、私は素直に嬉しいと感じた。黒木君は私の生き甲斐と言えるkzの仲間の１人だ。一緒にいると楽しいし、他とちょっとちがくて女の子を分かっている感じがある。
だから私を除く男子集団のkzの中で私をよく気遣ってくれるNo.1だ。

「黒木君！」

私が声をかけると黒木君はこちらを向いて、

「やあ、アーヤ」

と声をかけてくれた。

「ア−ヤもランニング？」

「そうだよ。いつもと道、変えてみようと思ってこっちに来てみたの。」

「そっか、偶然だね。」

と黒木君はいつものように甘い笑みを浮かべると、私の顔をみて心配そうに

「ア−ヤ、疲れてない？なんかいつもと違うよ。」

と顔をのぞきこんでくる。私は迷惑をかけまいと思って

「大丈夫！朝、宿題やっていないのに気づいて急いでやっただけだから。」

私の様子をみるなり黒木君はクッと笑って

「分かった、分かった。いい子だから落ち着きな。」

と仕方なさそうに言った。

「でも、ちゃんと休むんだよ。じゃあね。そろそろタイムリミットだ。」

と手をふってもとの道に戻って行った。私は手を振りつつ思った。

やっぱ、対人関係のエキスパートには敵わないなぁ。

私の誤魔化しはあっけなくバレ、黒木君を傷つけたのだ。今度あったら謝っておこう。

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