あんスタ短編 (ページ6)

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Valentine.mao② ページ6

申し訳なさそうな顔で謝ってくれる衣更先輩。

(こ、これは渡すチャンス…だけど、どうしよ、頭ぐちゃぐちゃで言葉が…)

『えーっと、ごめん、もし君が迷惑じゃなかったらさ、一緒に謝らせて欲しい。あーほら、一応俺のせいで、綺麗なラッピングに皺寄せちゃったから、さ』
て、普通に考えたらそれも迷惑だよな。

と頭を抱えてしまった。

う、こんな先輩も様になっててかっこいい…

でもダメだ。ちゃんと言わなきゃ。

｢あ、あの…衣更先輩！その、こ、これ！先輩に…渡そうと、思ってて…その、えっと…｣

言葉をつむぎ出したはいいけど、声も裏返るし、上手く伝えられないし、顔もまともに見れない…っ。

真っ赤な顔で俯いていると、先輩も口元に手を当て薄らと頬を染めていた。

『これ、本当に俺に？気を使ってくれてる…とか、そんなんじゃ…ない、よな？』

2人して赤くなった顔を突き合わせて、

｢…は、はい。まともに話したことも無いのに、こんなの怖い、ですよね…すみません、やっぱり…『え、あー…そうだったっけ？君、いつもバスケ部の練習見に来てる子だよな？確か…Aさん？だったかな？』…っ？！｣

間違ってたらごめんな？と、つけ加え、いつもありがとな？なんてお礼まで言われてしまった。

(いやいや待って待って？え、こっそり気配消して見てたから、てっきりバレてないと思ってた…)

｢あ、合ってます。あの、えっと…｣

あーもー！言ってしまえ！
ダメだったらその時はその時！

｢わ、私…衣更先輩のことがっ…す、好きです！良かったらこれ、貰って下さい…っ！！｣

存在すら知られてないと思ってたのに、実は名前まで知られてて、練習した事も何一つ役に立ってないけど、気持ちはしっかり伝えられた自分を褒めたい。
結果がどうであれ、素直に受け止めて、また明日から頑張ろう。

下げた頭とチョコを差し出した手が震えていた。

長い沈黙を破ったのは、

『ごめん』

その一言だった。

途端に目頭が熱くなり、視界が歪んだ。

｢そ、そうですよね…やっぱり『こういうの、その受けなれてなくて、なんて言っていいか分からないんだけど、ありがとう。そ、それと、こちらこそ、よろしくお願いします。』……え？｣

断られたと思い、引こうとした手を両手で包まれ、そっと頬を撫でられると、顔が上がった。

『え、ごめん、俺泣かせるようなこと言っちゃったかな？えーっとその、｢ほ、ほんとに？私で良いんですか…？｣…ああ。Aが良い。』