あんスタ短編 (ページ22)

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嫉妬03(燐音) ページ22

『お客様、宜しければこちらのタオルをｰ風邪を引いてしまいますよ』

そう声を掛けられ、有難くお店の人から借りたタオルに包まりお酒を頂いた。

それからどれぐらいの時間が経っただろう

周りにいた人も疎らになり、カウンターに1人、残ってしまった。

(あ、これ美味しい)

「すみません、これおかわりお願いします」

お酒は強い
燐音と一緒に飲みたくて強くなろうと努力した
でも…
(今はそれが仇となってしまった…全然酔えない…)

「…馬鹿だなぁ…」

覆ったタオルをキュッと握りしめた。

おかわりのお酒を煽るように飲むと、喉を通り満たされていくはずなのにどこか空っぽで寂しい

「すみません、御手洗お借りしますね」

と、立ち上がったところでホールハンズが震えていることに気づいた。

(今はいっか…)

席に置いてトイレに向かった。

戻ってくると、マスターがグラスを1つ用意してくれていた。

「あの、？」

『すみません。先程席を立たれた時からずっと、鳴っておりましたので、無礼を承知で取らせて頂きました』

これは、その方からの伝言です。

置かれたグラスに注がれたのは、

アプリコットフィズ

「…っ」

恐る恐る、グラスを手に持つと、涙が零れた

「すみません、ボンベイを…お願いします…っ」

震える手でグラスに口をつける。
1口、また1口ー

飲み終え、ゆっくりと振り返ったその瞬間ｰ

目の前が真っ暗になり、力強く抱きすくめられた。

『っはぁ…やっと…んの、馬鹿！』

乱れた呼吸と強い言葉とは裏腹に優しく頭を撫でられた。

(なんで、なんでそんなに…っ)

ｺﾄﾝとカウンターに置かれたグラスを見て、息を飲み、一気に煽る音が聞こえた。

『マスターお勘定を』

安心する暖かさに包まれ、力が抜けると同時に一気に夢の世界へと落ちた。

ｰｰｰん

気がつくと、背を向けられたはずの逞しい背中に乗せられていた。

「ごめん、なさい。」

やっとの想いで口に出来たのはたったそれだけの事
なのに、

『お、起きたか…あいよ♪』

前を見据えたまま、いつも通りの返事だけが返ってきた。

「何も、聞かないの？私…『んー…だいたいの事は想像つくっつーか、あー、俺っちメルメルからすげー怒られたんだわ。本当はさ、ちゃんとAから聞いてって思ってたんだけどよー、仕事終わって戻ったら事務所にいねーし、連絡もつかねーしで流石に焦った』…っごめん」

そうだったんだ。

『元を辿れば俺っちのせいだし、謝るのは俺の方ごめんな？』