織田作之助の元彼女は【織田作之助】【太宰治】 (ページ9)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:19,677 hit

第9話ページ9

一夜が明けた。あのまま私はいつの間にか眠ってしまったらしい。

起き上がって周りを見ると知らない場所にいた。それと、太宰さんが。

『太宰さん…』

「A、落ち着いたのなら話を聞いてくれ。織田作の、最後の話だ。」

昨日の今日だから少し涙が溢れそうになったけど泣きすぎた所為かもう出てはこなかった。

「織田作はね、ある組織の長と闘った。人を殺そうとしなかった彼が如何して闘おうとしたのか分かるかい？

彼が預かっていた子達が殺されたからだよ。命を失うのも判っていながら闘ったんだ。

だが私が駆けつけた時にはもう遅かった。最後に彼はこう言ったよ。『人を救う側になれ』と。でも其れだけでは無いんだ。

『大事な人が其方側に居る。見つけ出して側にいてやってくれ。彼奴の異能力は自分を犠牲にする。だからお前が…側にいて守ってやってくれ』

織田作が言った大事な人とは君の事だ、A。だから君の口から織田作の名が出てきた時は本当に驚いたよ。

それと同時に守らないと、と思った。」

『織田作さんが私を…？』

「嗚呼、誰よりも大切に思っていた。バーで飲んでいる時もよく君の話を聞いていたよ。」

『あの太宰さん。…私、出来ればこの話は聞きたく無かった。ずっと帰って来なくても良いから彼を待っていたかった。』

「…」

出ないと思っていた涙がまた溢れてきた。

『でも、でも…太宰さんに教えて貰って今は感謝しています。本当にありがとうございました。』

「正直、私の口から言うべきかは迷ったよ。けどキチンと話さないといつか君が壊れてしまいそうだったから」

ボロボロな私を見て微笑みながら太宰さんは言った。

「少し外の空気を吸いに行こうか」