第8話 ページ8
与謝野さんの治療が終わり太宰さんとまた二人になった。今度はバーではなく星が綺麗に見える探偵社から少し離れた丘。
「A。あの」
『お説教ですか?判っています。自分勝手なのは』
「そうじゃないんだ。Aに言わなければいけない事がある。」
凄く真剣な面持ちで真っ直ぐに私を見つめてくる太宰さん。大事な話っぽいから何だろうと気になった。
『何ですか?』
「バーで旧友の話をしたの覚えているよね?…あれ実は君の恋人の織田作なんだ。」
『…』
「私がマフィアを辞めるきっかけを作ってくれたのは、織田作だ。」
織田作さんが太宰さんを光の世界に導いた人?まあ織田作さんならあり得るかもしれない。
『じゃあ私達は織田作さんに救われたんですね。旧友と言っていましたが織田作さんが今何処にいるか知りませんか?』
少しでも情報が欲しかった。織田作さんにただただ会いたい一心だった。
「そのことなんだが…」
太宰さんは苦しそうな表情になった。どうかしたのだろうか。そういえば織田作さんの名前を出すと何時もこんな表情をしている。
『あの、織田作さんと何かあったんですか?喧嘩とか…』
「違う…そうじゃないんだ。織田作は」
何時もは冷静で余裕な太宰さんが別人のようになっている。それ程言いたくないのか?
『太宰さん、言わなくて良いです。否、言わないで下さい!太宰さんの苦しそうな顔なんて見たくないです。』
私なりに気をつかったつもりだが逆効果だったようだ。一層表情を曇らせて静かに切り出した。
「聞いてくれA。君が恋をした相手は…もう
この世には居ない」
頭を殴られたような衝撃が走った。全身が痺れて思うように動かない。けれど足だけは震えていた。
暫くたってやっと口から出てきたのが
『どういう事…ですか』
という一言だった。この世には居ない?織田作さんは…亡くなったという事?
「そのままの意味だ。織田作は亡くなった。いくら待っても…迎えに来てはくれないんだ。」
駄目だ。受け入れられない。私はこの四年間ずっと、待っていたのに。
『ぁ…ぁ…』
「A…』
『ああぁぁぁぁぁぁぁ!!ああぁぁぁぁぁぁぁ!!織田作さん!織田作さん!!!!!』
ひたすら叫んだ。我も忘れて叫んだ。織田作さんに向かって、叫んだ。
でも__届く筈は無かった。
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果汁ジノ%(プロフ) - ゆかりちゃん、やっぱり凄いなぁ……順位40位おめでとう( ´ー`) (2018年6月23日 14時) (レス) id: a6a058aaa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆかり | 作成日時:2018年6月16日 23時