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紗姫side

〜彩の正体がバレる数時間前〜


休み時間になると、体験で編入してきたイケメン男子3人組が

あちこち校舎を走り回っていた

私はその様子を、弁当を食べながら見ていたんだ

「あ〜クッソ!

橘どこにもいねぇじゃん!」

「そんなに簡単に見つかる訳ないだろ?」

「そうだぞ、昴輝」

私はボーっとその様子を伺っていたんだけど

3人のうち一人と視線がバッチリ合っちゃったんだ

その男子、月城君が後の二人と耳打ちしたかと思うと

なんとこっちに近寄って来たんだ

そして、私の前まで来るとこう言った

「あのさ、橘知らないか?」

え・・・彩?

「綾なら屋上にいると思いますけど・・・」

私がおずおずと言うと、3人はほぼ同時に首を振った

「橘が居そうな所は全部見たんだよ。他にはないのか?」

他に?

私はうーんと考えていたけど、こういうことは私には合ってないみたいで

いい考えは浮かばなかった

一部始終を拝見していた祐飛と蓮も一緒になって考えたけど

二人ともダメ

「・・・ごめん、わかんないや」

「そ」

月城君は短く返答すると、クルッと体を翻した

答えてあげたのにそれだけ?

私は少々不服に思いながらも、黙って見届けようとしたその時

・・・空気を読めない奴が一人

「あのさぁ、自分達から訊いておいて

「ありがとう」の一言もないのかよ」

蓮が言った

そうだ、こいつ、空気読めないんだった!

どうしよう、この一言で場の空気が重くなったら

と、私が考えた束の間

月城君から予想外の返答が返ってきた

「そりゃ、橘をシカトしてる奴らに

「ありがとう」なんて言いたくないよな?」

その言葉を訊いて、私達、いや教室にいた全員が硬直した

何でそれを・・・

私が思ってる事を感じ取ったように、月城君が目を細めた

「わかるさ、橘は自分からこの教室に入るのを拒絶している。

恐らくイジメの類だろうって事は、容易に想像ができる。

それに、橘がそれを受けていたとしても、全然気にしてないって事もな」

「ちょ、ちょっと待ってよ。

その言葉だと、私達にだけ比があるみたいじゃん。

綾が、綾が・・・」

私はこの先を言うのが躊躇われたが、一気にまくしたてた

「綾が・・・綾が、イジメたって証拠があるんだもん!」

「はぁ?そんなのどうだっていいね。

そんなのどうにだってなるし、そんなのに騙される俺らじゃねーから」

その言葉がやけに私の心を抉っていった

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作者名:天奏 | 作成日時:2019年3月3日 5時

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