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光音side

「ゼン、あんな別れ方で良かったのか?」

冷は俺より何歩か先を歩いている

さっき笙馬からLINEが来て、ここからほど近い場所の病院に行ってる

冷には先程伝えたから場所は把握してる筈だけど、なんか危なっかしい

「あれで良かったんだよ」

それだけ言うと、また歩を速める

これ以上この話をするのはやめといた方が良いな

「なぁ、ゼンは生まれ変わりたいって思った事、あるか?」

俺がそう訊くと、冷は立ち止まり振り返る

「何だ、突然」

「いや。ゼンは生まれ変わりたいって一回は思った事あるかな〜、と」

冷の過去の事もあるし

冷はクルッと踵を返し、また歩き始める

「・・・生まれ変わりたい、とは思った事はない。だけど・・・」



「・・・“死にたい”と思った事はある」

今度は俺が止まる番だった

「・・・何で?」

俺が止まったのが分かったのか、冷も足を止めて太陽を眩しそうに見つめた

「俺がこの世界に生まれてこなかったら、親父も花衣も死ななかっただろうな、と。

それに、正直花衣が死んだ時死のうと思ったし」

「死んでいた、と決まった訳じゃねーだろ」

「・・・それは違うな。俺がいたから死んだ。それは揺るぎない事実だ。

俺がいなかったら、あの日じゃなくもっと先に死んでたと思う」

俺は返す言葉がなかった

『死のうと思った』

それが頭の中から離れない

「『死のうと思った』、なんて言うなよ」

「今俺が生きているのは、一種の呪いみたいな物だからな」




冷の過去を聴いた日、冷は言った

『俺はあの日、花衣に死なれる直前に言われたんだ。

『彩様、生きてください』って。それが今、俺の呪縛となっているんだよ。

俺は一刻も早く・・・この世からいなくなりたい』





「ゼン、お前が最低な人間で性格が超悪くてズバズバ傷つく事を言ってるのは

俺らが一番良く知ってる」

「・・・何?俺の悪口言ってんの?」

ちょっと不機嫌そうな口調に、笑みを漏らす

「だから、お前が例え他人でも人を助けてしまう性格なのは、ちゃんとわかってる」

冷が小さく息を呑んだ

「ゼンが死にたいって思ってても、この世界にはお前に生きていて欲しいって

思ってくれている人の方が多いって事も忘れんなよ」

俺はそう言って、冷の横を通り過ぎた



俺はあの時

冷があの2人に別れを告げた時、何かが足りていないように感じた

俺には、冷がこう言っているように聞こえた

『・・・生まれ変わったら、また』と

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作者名:天奏 | 作成日時:2019年3月3日 5時

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