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紗姫side

「なぁ、何で彩の事をあいつらは「ゼン」って呼んでるんだ?

そもそも第一人称が私から俺に変わってるし」

彩は待った、と言わんばかりの顔で制止した

「わかった。お前が疑問に思ってる事に答えるよ」

彩は頰をポリポリ掻いていたけど、「ま、いいか」

と言って、話し出した

「まずゼンだけど、俺のあだ名。

「全部完璧に出来る天才人」を簡略化して

頭文字取って「全」になって、それをカタカナに変えて「ゼン」」

「彩ってあだ名って嫌いじゃなかったか?」

「ん、そうだけど。

でも、別に女子っぽくないあだ名なら基本的オッケイかな」

宥翔さんはまだ納得出来ていないような顔だったけど

時間が無いのをわかったのか、別の質問をぶつけた

「じゃあ、俺っていうのは?」

「あぁ、俺?俺はな・・・

元々前は「俺」が基本の第一人称だったんだけど

風神学園出たら、俺って言ってるのは可笑しいだろ?

だから「私」に変えた。

どっちかというと俺に戻ったって方があってるな」

宥翔さんは珍しい物でも見たような顔で彩を眺めた

「彩って・・・俺の知ってる彩とは大分違うんだな」

無意識のうちに発した言葉だったのだろう

宥翔さんは慌てて口を塞いだ

その時、彩の携帯が鳴った

彩は画面を見るなり顔を顰め、宥翔さんに目を向けた

「ごめん。そろそろ行かないと」

「わかった。・・・彩、」

宥翔さんは何かを言い掛けたけど、途中で口籠った

彩は宥翔さんが何を言いたいのか察したようで、苦笑しつつ言った

「宥の言いたいことぐらいわかってるさ。

大丈夫だ。ちゃんとするよ。

それに、宥は俺に何があったのか知りたいんだろ?

残念だけど、俺の口からじゃ言えない」

彩はそう言ってベランダの方に足を向け

カバンの中から靴を取り出し、上履きを入れた

彩が靴を履き終わったら

柵に体を乗せた

彩は最後に宥翔さんを見て、少し、笑った

「・・・俺の口からは言えないけど、あいつに、

俺の母親に訊いてみなよ。

俺が話しても良いって言ったっていえば

きっと話してくれると思う」

「うん。わかった。

・・・彩、また」

「ん。日程は追って連絡するよ」

彩はそう言い残し、ベランダから

飛び降りた

私は急いで窓から身を乗り出し、下を見ると

彩はあの秀才3人と、学校を出るところだった

二階から飛び降りて無傷、か

私達はただただ彩の背中を見つめることしか出来なかった

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作者名:天奏 | 作成日時:2019年3月3日 5時

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