君の名を呼ぶ (ページ44)

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「失礼致します」
「ありがと、貰うね」

　私の手から洗濯物を受け取ったジェシーさんがそれをクローゼットへしまうのを見届けると、

「それでは、失礼致します」

と、部屋を出ようとした私を、

「行かないでよ」

とジェシーさんが引き止めた。

「Aちゃん、もうちょいここに居て？」
「ですが……」
「食事の準備も済んでるんでしょ？ちょっとくらいイイじゃん」

　そう言ったジェシーさんは私の手をくっと引っ張ると、その勢いのまま私をベッドへ座らせた。ぽすん、と跳ねるベッドの感触に驚いていると、ジェシーさんはくすくす笑った。それから、

「今朝のこと、俺、本気だよ？」

そう言って、私の前にしゃがみ込んだ。真っ直ぐなジェシーさんの視線が向けられる。

「彼女、昨日言ってた京本物産の娘さん」
「そう、なんですね」
「めっちゃ北斗のこと好きみたい、ダダ漏れだよね」

　ジェシーさんの言いたいことはわかる。私も、彼女が北斗さんに向ける眼差しの温度には気がついていた。私と同じ温度。でも、私はそれを抑えなければならなくて、彼女はそれを真っ直ぐ北斗さんへ向ける。きっと、いくらテリトリーの狭い北斗さんでも、その想いは肌で感じているはず。とても可愛らしい彼女と北斗さん、家柄も身長差も、お似合い過ぎてどうしようもない。

「Aちゃん……？」

　黙り込んだ私の頭を、大きな手で優しく撫でるジェシーさん。その暖かさに、そんなつもりはないのにじわりと視界が滲む。

「そんな辛い気持ち、忘れさせてあげるから」

　ジェシーさんの優しい声が、私の頬を撫でる。ふと顔を持ち上げられたのは、その頬の感触がジェシーさんの手だとわかった後で、

「俺のこと、好きになってよ」

膝立ちの態勢でそう言ったジェシーさんの唇が、優しく私の唇に乗った。暖かい、と思って自然と瞼を伏せると、口付けが少し深くなった。ジェシーさんの舌が私の唇を割って入って来て、戸惑う私の舌を探して追いかけて、絡めとった。そのまま耳たぶを触られて身体がびくんと大きく跳ねた私を、逃がさないようにジェシーさんが口付けたままで抱き締める。深い口付けに息が続かなくなってしまって熱っぽい吐息が漏れた次の瞬間、ジェシーさんの部屋のドアが開いた。