君の名を呼ぶ (ページ25)

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　Aさんがティーセットを片付けてくれた後、風呂入って寝るね、とジェシーが部屋を出ていく後ろ姿を見送る。
　家での過ごし方は勝手知ったるモノで、ジェシーは慣れた様子で、Aさん達が準備してくれたゲストルームに行ってしまった。
　結局、あの階段で何があったのか確かめることも出来ないで、俺は情けないくらいの溜息をついてベッドへ腰掛けた。
　ジェシーがあんな風に女の子に接するのを、初めて見た気がする。いつも陽気で、気がつけば周りに自然と人がいて。太陽みたいなジェシーは俺なんかと違ってずっと人気者で、初めて会った時から、人の懐に入るのが上手い奴だった。だからこそ、俺みたいな奴ともこうやってずっと友達をやっている訳で、でも。

「何か……違うんだよな」

　ジェシーの、Aさんのそばにいる時の空気感がどこかいつもと違うように感じていたのは、ずっと俺の思い過ごしかと思ってた。けど、さっき……階段でジェシーがAさんを抱き締めているのを見て、回路が何本か爆ぜた気がした。
　階段で体勢を崩したAさんを助けて支えていただけだとジェシーが言って、彼女もそれを否定しなかった。けど……支えるだけで、そんなに強く抱き締める必要なんて。それに、いつもと様子が違うAさんの態度も気になった。まるで、俺から逃げようとしているみたく見えて、

「ンなわけない、よな……？」

虚しい独り言が、その辺をフワフワ彷徨って、薄まって消えていく。
　モヤモヤとした気持ちを抱えたまんま眠れそうになくて、独りグズグズ考えていても仕方ないし。

「……っしゃ」

　意を決して、俺はドアを開けた。