君の名を呼ぶ (ページ23)

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「……ジェシーさんのせいだ」

　やり切れない想いを口にすれば、また何だか身体が少し強ばってしまう。
　いつも明るくて賑やかだけれど、ジェシーさんはいつもとても優しい方で、お父様がアメリカの方だからレディーファーストもとてもナチュラルで。私たちメイドにもフラットに接して下さっていて、メイド長も、ちょっとヤンチャなお孫さん、みたいな感覚だといつだか話していた。
　けど、今日のジェシーさんはいつもと少し違って、何だか……少し怖い。

「だからって、ジェシーさんのせいにしちゃダメだよね」

　マイナス的な思考に、自分の頬をぴしゃりと両手で挟む。そんなこと言っていても仕方ないし、明日も朝から仕事だし。

「よし、お風呂入って寝よう」
　
　
　
　
　目覚ましの音に目を開けるといつもと変わらない朝で、ベッドの上で大きく伸びをする。それだけで何だか血流が良くなった気がして、ほぅとひとつ息を吐くと、勢いよくベッドから飛び降りた。
　住み込みの私には個室が与えられていて、その部屋は、私が来る前の住人はメイド長だったらしい。

「……よし、」

　ハンガーに掛けられた北斗さんのガウンが目に入って、何とはなしに気合いを入れる。
　お洗濯……した方がいいよね、とか考えながらパジャマから申し訳程度の部屋着に着替える。それから、ハンガーからガウンを下ろすと、またふわりと仄かな北斗さんの香りが私の鼻を擽った。そんなことで胸がまたキュンとなって、思わずガウンを握る手に力が篭ってしまった。どうせお洗濯するし、と私の中の悪魔が囁いて、考える間もなく思わずガウンを抱き締めてから、すぐに我に返る。

「……っ！ダメじゃん！」

　丁寧にガウンを小さく畳んだ私は、着替えの為に慌ててメイドルームへ向かった。