君の名を呼ぶ (ページ14)

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　食事を終えたお二人はそのまま北斗さんのお部屋へと戻っていかれて、テーブルを片付けながらふぅと一息をつく。

「何だい、ため息なんかついて」

　メイド長に笑われて、私も思わず苦笑いをする。ジェシーさんがいらっしゃるお陰で夕飯の席は随分賑やかで、楽しそうに食事をする北斗さんを久々に見た気がした。いつもはおひとりで、広いダイニングテーブルに座る北斗さんを見ているから、ジェシーさんがお見えになった日は本当に楽しそう。それなのに、今日は時々ふっと寂しげな表情を浮かべる北斗さんに、胸がざわついた。

「ジェシーさんがいらっしゃるとにぎやかですよね」
「確かにね、北斗坊ちゃんとウマが合ってるのが不思議なくらいだけれど」

　メイド長の言葉に思わず吹き出してから、

「あ、北斗さんが、夕べと同じように紅茶とクラッカーを準備して欲しいと仰ってました」

と、食事前の北斗さんの言葉を思い出した。

「じゃあ、英語のレッスンが終わる頃がいいね」

　時計を確認したメイド長が、

「あと二時間後くらいかね」

と、食器を効率よく片付けていく。
　紅茶の準備までの僅かな時間にメイド長と手早く夕食を済ませると、

「あら、このチーズケーキ美味しいわね」

と、メイド長が頬を押さえている。

「ホントですか！？」
「あのどら焼きも美味しかったし、もうデザートはAに任せた方が間違いなさそうだね」
「あ……ありがとうございます！」

　まだまだ未熟な私がこうやって手放しに褒められることはなかなかなくて、それは私がもっとしっかりしなくちゃいけない証拠なのだけれど。北斗さんやジェシーさんが褒めて下さるのはやっぱりまだ私の未熟さに目を瞑って下さっているのはわかっているし、でも、やっぱりメイド長に褒めてもらえるのは凄く嬉しくて。

「A」
「はい！」
「……ニヤニヤするんじゃないよ」

　また叱られてしまった。