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『女だっているでしょ。そういう奴。ねぇ！』
諏訪の表情は、何故か楽しそうだった。
諏訪の目線は、一定の人物に向けられている。
その人物___宇佐美に向かって、諏訪は先程と変わらず楽しそうな声音で声を掛けた。
『あ！そう言えば香帆さぁ、澪奈と昔は仲良かったよね？』
『はぁ？何いきなり……』
『ねぇ、どうして話さなくなったの？』
『……アンタには関係ないでしょ』
いつもの宇佐美とは、全く雰囲気が違う。
いつもはクラスの人気者で、笑顔が絶えないイメージだ。
そのイメージとかけ離れている今、思うことはひとつ。
「………………怖」
そう思ったのは、俺だけじゃなかった様だ。
いつも一緒に居る魚住も何か感じ取ったようで、心配そうな表情で宇佐美に声を掛けていた。
しかし宇佐美は魚住の心配を、何でもなーい。と一言で片付け、突っぱねた。
「何でこういう時の女子って、こんな怖い訳？」
「何でだろうな」
場違いな感想を述べているその時、俺達の耳に聞こえてきた声。
その声主___水越は、予想だにしなかった言葉を告げた。
『もし女子がやったなら、犯人は茅野じゃない？』
冷たい声音で言い放たれた言葉。
俺は勿論、先生も驚いている。
名指しされた本人も、急に矛先が自分に向いた事によって、素っ頓狂な声を上げる。
『だって、澪奈の事ずっと追いかけ回してたじゃん』
『確かに。1番、奴 隷が当てはまる』
水越の言葉に乗っかかる様に、小宮山も言葉を紡いだ。
…………奴 隷。
その言葉に、身体がピクリと反応した。
それに気が付いたのか、先生が頭を撫でてきた。
「そろそろ8時になる。教室に行くが、お前も行くか？」
「………………行きたくない」
「そうか」
それ以上何も言ってこない先生。
俺の頭をひと撫でし、教室へ向かって行った。
俺は、先程まで先生が座っていた椅子に、腰掛けた。
スピーカーからは、茅野が否定している声が聞こえる。
だが、それに対して声を上げる者がいた。
『否定すれば否定する程、怪しいよね』
小さめの声でそう告げたのは、辻本佑香。
その言葉に、茅野もそして俺も絶句した。
何故このクラスは、こうなんだろう。
標的ひとりに対して、全員で攻撃する。
普段意見をしない奴すらも、ここぞとばかりに言葉をぶつける。
「……だっせぇ」
無意識に出た声。
誰も居ない此処では、どれだけの言葉を紡ごうが全て空に消える。
ただ、虚しさだけが残る。
天を仰ぎ見る。
「………………はぁ。……あ、幸せ逃げちゃう」
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作者名：字の人 | 作成日時：2022年6月15日 0時
